第二幕その十
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第二幕その十
「御前を道具として育てていたのだ」
「道具?」
「いらなくなった道具は捨てられる」
一つの現実だった。
「御前は殺されようとしているのだ」
「僕がか」
「そうだ。気をつけるのだ」
彼への忠告だった。
「わかったな」
「ミーメが僕を」
「そして最後に聞きたい」
死にそうな顔で告げてきたのであった。今まさに息絶えようとするその中で。
「御前の名前は何というのだ」
「名前?」
「そうだ。御前の名前は何というのだ」
「ジークフリート」
こう名乗ったのだった。
「それが僕の名前だ」
「ジークフリートか」
「そうだ。それが僕の名前だ」
「わかった。ではな」
こう言い残して事切れてしまった。ファフナーはこれで死んでしまったのだった。
「死んだ奴は何も語らない」
ジークフリートはファフナーの亡骸を見下ろしながら呟いた。
「せめてだ。葬ってやろう」
その力でファフナーの亡骸を洞穴の中に運ぶ。そしてその中の深い部分に埋めて土をかける。そうして彼を葬ったのであった。
そのうえで剣に手をやる。するとであった。
「熱いっ、血か」
その血に触れて思わず手を退けた。咄嗟に指を口の中に入れた。するとだった。
「じゃあ僕はこれでね」
「ええ、じゃあ」
小鳥の一羽が去った。何とその声が今聞こえたのである。
「小鳥の声が」
「ニーベルングの財宝はジークフリートのものね」
こう言った声が聞こえたのである。
「洞穴の中にある隠れ兜もあるし」
「隠れ兜?」
「それに指輪を」
次に指輪のことも言う小鳥だった。
「手に入れれば世界の支配者になれる」
「世界の支配者か。わかった」
それを聞いて頷くジークフリートだった。
「それなら」
彼には何もかもがわかった。そうしてまた洞穴に入るのだった。そしてその頃。
「貴様か」
「むっ、兄貴か」
ミーメの前にアルベリヒが出て来た。そうして言い争いをはじめた。
「何でこんなところにいるんだ」
「御前こそだ」
アルベリヒは憎しみに満ちた顔で弟を見ていた。
「こんなに急いで抜け目なく」
「抜け目ないだと!?」
「そうだ、何処に行くのだ悪党が」
「悪党だと、それは兄貴の方だ」
「わしが悪党だというのか」
「そうだ」
まさにそれだと言い返すミーメだった。
「貴様が悪党でなくて何だ」
「わしの宝を狙っているな」
アルベリヒは既にそれを察しているのだった。
「そうだな」
「ここはわしの場所だ」
ミーメもミーメで言い返す。
「ここで何を探し回っている」
「御前の泥棒を見過ごすものか」
「わしが苦労して手に入れるものを邪魔するのか」
「あの指輪は誰のものだ」
アルベリヒも負けてはいない。
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