第三十四話 カストロプ公
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を取る事しか考えない馬鹿な貴族が多くなりましてね、平民達の不満が高まっているんです。下手をすると革命が起きかねない、だからそれを防ぐために卿を財務尚書にしたのですよ」
「……」
どういう事だろう、ブラウンシュバイク公の言葉に皆が顔を見合わせている。
「案の定卿は職権を不正に利用して私財を貯め始めた、周囲が顔を顰める程に。平民達は皆、卿のような男が財務尚書だから税の取り立てが厳しいのだと卿を恨む事になった……」
「……馬鹿な、誰が財務尚書をやっても同じだ」
カストロプ公が抗議するとブラウンシュバイク公がまた声を上げて笑った。
「その通り、誰がやっても同じです。それを変えるためには抜本的な改革を行わなければなりません。しかしそれを行えるだけの環境が整っていなかった。となれば平民達は帝国を恨むようになる。だからカストロプ公、卿を財務尚書にする必要が有ったのです」
戦慄が身体を走った。要するに帝国に対する恨みをカストロプ公に向けさせたという事か。だからこれまでカストロプ公はどれほど罪を犯そうと処罰されなかった。彼が処罰される時は平民達の不満が限界に達した時か、帝国が改革を実施する時……、そしてその時が今来ようとしている。なんという冷酷、なんという非情、皆蒼白になって凍り付いたように動けずにいる。
「わ、私を利用したのか、リヒテンラーデ侯!」
悲鳴のような声をカストロプ公が上げるとリヒテンラーデ侯は苦笑した。
「不満かな、カストロプ公。卿も随分と良い思いをしたのだ、そろそろその代償を払うべきであろう」
「……卑怯な」
呻く様な声にリヒテンラーデ侯の苦笑が益々大きくなった。
「卑怯? 気付かなかった卿が愚かよ。ブラウンシュバイク公は私が何も言わずとも気付いておったわ。公が言ったであろう、必要だから卿を生かしておいたと……」
ブラウンシュバイク公を見た。公は穏やかに笑みを浮かべている! 慌てて視線をカストロプ公に戻した、悲鳴を上げたくなるほどの恐ろしさだ。おそらく公を見た人間は皆そう思っただろう。
無言で立ち尽くすカストロプ公に対しリヒテンラーデ侯の表情が一変した。今度は嫌悪感を露わにしている。
「長かったわ、卿のような男が財務尚書の任にあるのかと思うと虫唾が走ったがようやく始末できる。改革が出来るだけの体制が整ったからの」
「改革が上手く行くと思うのか? 笑わせるな! 間接税の税率を引き下げれば税収は不足する。その不足分をどうするつもりだ。結局は増税しかあるまい!」
カストロプ公が悲鳴のような抗議の声を上げたがブラウンシュバイク公もリヒテンラーデ侯も微動だにしなかった。
「貴族が必要以上に税を取らなければ間接税の税率を下げても十分にやっていけます。それにカストロプ星系は帝国政府の直轄領になる、そこから
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