第三十四話 カストロプ公
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えた。
「卿の犯した罪は此処に記載されていますよ、カストロプ公」
「ブラウンシュバイク公……」
ブラウンシュバイク公が手に書類を持っている。リヒテンラーデ侯同様公も冷たい笑みを浮かべている。
「司法省、内務省に保管されていたものです」
カストロプ公がこちらを見た、彼だけではない、皆が私とルンプを見ている。上手いやり方だ、これでは我々が改革に積極的に賛成してカストロプ公を排除しようとしている、そう見えるだろう。
ブラウンシュバイク公も我々に視線を向けてきた。表情には笑みが有る。皆には公が我々に感謝しているように見えるはずだ。いや実際に感謝しているのかもしれない。だがそれだけでは有るまい、同時に我々がその感謝を受け取るか、それとも拒否するか、どちらを選ぶかを確認しようとしている……。
ルンプと顔を見合わせた、私が頷くと彼も頷く。今ここで逆らうなどキチガイ沙汰だ。笑みを浮かべて僅かに頭を下げた。ルンプも同じようにする。ブラウンシュバイク公の笑みが更に大きくなった。これで貴族達は我々がブラウンシュバイク公に密接に繋がっていると認識しただろう。そして私もルンプも今の地位に留まる事が出来る。この場にいる大勢の貴族達がその証人だ。
「資料の中には十年前、卿が人を使ってコンラート・ヴァレンシュタイン、ヘレーネ・ヴァレンシュタインを殺させた事も記載されています」
またどよめきが起きた。皆が二人の公爵を見比べている。ブラウンシュバイク公は冷たい笑みを浮かべカストロプ公は顔面を蒼白にして小刻みに震えている。
「あれは、リメス男爵家の……」
「無駄ですよ、キュンメル男爵家の横領を図った卿が男爵家の顧問弁護士をしていた父を殺した事は分かっているんです。その罪を他人に擦り付けて素知らぬ振りをしていた事もね」
ざわめきは止まらない。今度は皆がヴァルデック男爵、コルヴィッツ子爵、ハイルマン子爵を見ているが三人はその視線を無視してカストロプ公を睨んでいた。或いは周囲の視線に気付いていないのかもしれない。十年間濡れ衣を着せられたのだ。そしてここ最近はブラウンシュバイク公の報復に怯えていただろう。恨みは深いはずだ。
「復讐のつもりか、それでカストロプ公爵家を廃絶に追い込むのか、ブラウンシュバイク公」
カストロプ公の声が震えている。そしてブラウンシュバイク公が声を上げて笑った。
「復讐? 復讐するつもりなら昨年の陛下御不例時に殺していますよ。必要だから生かしておいた、そして今は処分する必要が生じた、そういう事です」
「どういう事だ、それは……。生かしておいた?」
訝しげなカストロプ公を見てブラウンシュバイク公がまた笑い声を上げた。公だけではないリヒテンラーデ侯も笑っている。明らかに嘲笑と分かる笑い声だ。
「近年平民達から税
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