暁 〜小説投稿サイト〜
銀河英雄伝説〜美しい夢〜
第三十四話 カストロプ公
[4/7]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
有る。だがあくまでそれは個々に対応した事だ、それを制度化するとは……。

「この制限を超えて税の徴収を行った場合、帝国臣民を徒に苦しめたとして重い罰が与えられるであろう。なお、同時に間接税の税率も引き下げる事とする」
間接税も引き下げる、つまり貴族だけでなく政府も税を軽減するという事か……。当然だが税収は減る、貴族だけに不利益を押し付けるわけではないと言う事だな。これでは政府に対して正面から不満を言うのは難しい。

政治改革、平民達の保護か……。ブラウンシュバイク公だな、これは公が主導している事だろう。確かに平民達の不満は高まっている、何処かでガス抜きが必要だったのは間違いない。それをガス抜きではなく根本的に解消するという事か。しかし貴族達が納得するだろうか……。

「お待ち頂きたい!財務尚書として承諾しかねます! 第一、私はそのような話は聞いておりませんぞ」
太い声が黒真珠の間に響いた。財務尚書カストロプ公が顔面を真っ赤にしている。職掌を侵された、そう思っているのだろう。大広間の人間は皆驚いたような表情でリヒテンラーデ侯とカストロプ公を見ている。

「愚かな……」
ルンプの呟く様な声が聞こえた。全く同感だ、これだけの大事だ、相談するのを忘れたなどという事は有りえない。故意に知らせなかったのだ。それに気付けば何故かと思わねばならない、そうであれば当然だが対応の仕方が有る。それなのに大声で異議を唱えるとは……。確かに愚物だ、処分するべきであろう。

リヒテンラーデ侯が興味なさそうな表情をしている。
「カストロプ公か……」
まるでそこに居たのかと言わんばかりの口調だ。
「間接税の軽減などすれば税収が減ります。それではやっていけません!」
憤然として異議を唱えるカストロプ公をリヒテンラーデ侯が憐れむ様な表情で見た。

「残念だが卿はもう財務尚書ではない」
「……」
どよめきが起きた。やはりここで処分するのか……。カストロプ公が何か口走ったようだが全く聞こえない。皆口々に何かを喋っている。リヒテンラーデ侯が右手を挙げると黒真珠の間がシンと静まった。

「卿はクビだ。新任の財務尚書はゲルラッハ子爵が務める。卿が心配することは無い」
「……馬鹿な、何故……」
「何故? カストロプ公爵家はこれまで犯した罪により廃絶となった」
リヒテンラーデ侯が冷笑を浮かべている。言葉の内容よりもその表情に驚いた。皆が口を開くことも出来ずに黙って見ている。

「罪とは、罪とは何です、リヒテンラーデ侯。一体私が何の罪を犯したと言うのか」
思わず失笑しかけた、ルンプも顔を歪めている。この男、自分の犯した罪が誰にも知られていないとでも思っているのか。いや、犯していないと言わざるを得ないのか。彼方此方で顔を見合わせ失笑する貴族、軍人の姿が見
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ