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銀河英雄伝説〜美しい夢〜
第三十四話 カストロプ公
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に近い位置には帝国の実力者と言われる大貴族、高級文官、武官がたたずんでいる。ブラウンシュバイク大公、ブラウンシュバイク公、リッテンハイム侯、リヒテンラーデ侯、エーレンベルク、シュタインホフ両元帥……。皆無言だ、しかし不安そうな表情は見せていない。おそらく彼らは発表の内容を知っているのだろう。

政府閣僚で有る我々の知らない政府発表が有る。だが不思議な事では無い、帝国には二つの政府が有るのだ。一つはリヒテンラーデ侯を首班とする政府、これは公式なもので私もルンプもその一員だ。そしてもう一つは帝国の実力者ブラウンシュバイク大公親子、リッテンハイム侯、リヒテンラーデ侯達からなる非公式な政府だ。どうやら今回の政府発表はそちらの非公式な政府からの物らしい。

帝国で何かが起きようとしている。カストロプ公は未だ処分されていない、財務尚書のままだ。或いは今回の政府発表で処分が発表されるのかもしれないがそれだけではあるまい。皆を集めたのだ、それ以外に何かが有るはずだ。そしてそこにはブラウンシュバイク公の意向が強く反映されている……。

あの呼び出し以来、ブラウンシュバイク公を軽視するのは危険だと私もルンプも肝に銘じている。単なる軍人ではないという事を改めて認識した。ブラウンシュバイク公爵家の養子になったのも勢力バランスを保つためだけではあるまい。むしろブラウンシュバイク公爵家がその器量を見込んで受け入れたと見るべきだろう。公爵家の将来を彼に委ねたのだ。

「全人類の支配者にして全宇宙の統治者、天界を統べる秩序と法則の保護者、神聖にして不可侵なる銀河帝国フリードリヒ四世陛下の御入来」
式部官の声と帝国国歌の荘重な音楽が流れる中、皇帝フリードリヒ四世が入来した。参列者は皆深々と頭を下げて陛下を待つ。ゆっくりと頭を上げると皇帝フリードリヒ四世が豪奢な椅子に座っていた。

陛下は黒真珠の間を見渡すとリヒテンラーデ侯に“始めよ”と命じた。リヒテンラーデ侯が陛下に一礼すると我々の方を見た。
「皆、ご苦労である。今日集まってもらったのは他でもない。この帝国がこの後も栄えていくため陛下はある決断をした。それを皆に伝えるためである」

リヒテンラーデ侯の言葉にざわめきが起きた。なるほど勅命というわけか、それなら政府閣僚も逆らえない。しかし一体何を行うのか……。
「貴族に与えられている徴税権に対しこれまで帝国は制限を設けてこなかった。しかし近年貴族の中には徒に税を貪り、帝国臣民を苦しめている輩がいる。よって帝国は臣民を守るため貴族の税の徴収権に対し制限を加える事にした。すなわち税率の上限を定める」

どよめきが起きた。貴族の税の徴収権に対して制限を加える、これまで一度も例の無かった事だ。もちろん苛政を極めた貴族に対しては叱責が入った事、或いは取り潰しを行った事は
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