第78話 =ラストバトル=
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な……』
その声に励まされ、ドアを開けるためにカードをスライスさせる。いつものように花の香りが流れるがそれを気にしている余裕はない。室内の照明は消灯時間をとっくに過ぎているため落ちており外の光が優しく光っている。そして変わらずにあるのはジェルベッドとこのフロアを仕切っている白いカーテン。もう俺は何のためらいもなしに端を掴む。
「……やっと」
そんな声がいつの間にか出ていた。薄い診察衣に身を包んだ少女が窓の外に目を向けており足の上には今まで彼女を拘束していた悪魔の道具…ナーヴギアが。
「…来たよ、ユカ」
なんとか声を出して呼びかける。するとその体は大きく震えて振り向いて、一瞬驚いた顔をしたがその顔に薄っすらと涙を浮かべて微笑んだ。
「……リク、ヤ…」
長い間声を出してないせいか、かすれているが数年前に聞いた声とまったく変わらない声だ。俺はユカに近づいて近くの椅子に座るとその手を取った。
「……ようやく…終わった…最後の戦いが…」
ユカは俺の手についた血を見て小さく「そう」と呟くとその上から手を乗せてきた。
「…まだ…アンタの言ってること…上手く聞こえないけど……判るわ……がんばったのね…」
いたわるように顔を撫でられくすぐったく感じる。ちょっと恥ずかしくなってその手を優しく払いのけると改めてユカの顔を見て、俺は口を開いた。
「よし!…辛気臭いのは無しにしてっと……。久しぶり、悠香」
「…うん……3年ぶり…くらいかしら……久しぶり、陸也。…そして………ただいま、リクヤ…!」
「あぁ……お帰り…ユカ…!」
涙が出そうになるのを堪えて、泣いているユカをそっと抱きしめる。その時不意に窓ガラスに目が映り少年が目に入り、その少年が口を開く。
【……ユカのことは任せたよ。じゃあな、陸也】
『あぁ……もちろん…任せろって…。じゃあな…リクヤ』
腰と背中に大きな剣を2本携えており白いロングコートを着ている少年は背を向けて向こうへと駆け出していった。その先には棍を持った少女や小さな竜をつれた女の子、ウェイトレスみたいな格好の少女…そして俺の幼馴染に似た少女のもとへとどんどん遠ざかるように足を進めていった。
『…今までありがとな……』
こうして2年と3ヶ月に及んだ電子世界の騒動は無事ハッピーエンドで終わりを遂げた。
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