ファントム・バレット編
Crimson Ammo.
顛末・Period2 ―動き出す歯車
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急激に上がる。
「あ、安岐さん!!これは………!?」
「……やっぱりね」
安岐は螢に近寄ると、アミュスフィアに接続している心拍計を少しいじる。
「螢君のアミュスフィアは……改造されて、身体の異常による自動ログアウトが無効化されています」
「な……どうして!?」
「恐らくは……」
藍原が厳しい顔で何かを言おうとしたとき、左手に握った端末からユイの声が響いた。
『ママ、壁のパネルPCを観てください!回線を、《MMOストリーム》のライブ映像に繋ぎます!』
はっ、と顔を上げると壁に埋め込まれたテレビ画面に先程までALOで見ていたものと同じ中継が映し出された。
画面は二分され、片方には【Krito】と【Sterben】の文字が入っており、両者のHPゲージが画面端に表示されている。押されているのはキリトで、連続技を回避できずHPが4割を切るのに思わず息を飲んだが次の瞬間、明日奈の目は隣の映像―――【Ray】と書かれた画面に移った。
―――激しい閃光と爆散するポリゴン片。
敵のHPが表示されているはずのそこには代わりに『625/1000』という文字があり、徐々にその数を減らしていた。
ポリゴン片が舞い散るその暴風の中心にいるのは黒髪のプレイヤー。漆黒の瞳を爛々と光らせ、1人で1000の軍勢を次々と撃破している。
「……やはり、このためか」
「あの、藍原さん。これは……?」
「……『水城螢』の本質。とでも言いましょうか。思考速度を最大で通常の30倍まで引き上げ、一時的に超人のように戦う事ができる、と聞いています。……私も見るのは初めてです」
思考速度は心臓の鼓動に比例する。心臓の鼓動が30倍までクロックアップされればアミュスフィアの安全装置が作動し、自動ログアウトしてしまう。
「じゃあ……」
信じがたい想像に至って明日奈は思わず手を握りしめた。
「螢君が自分で安全装置を止めた、そうゆう事だろうね」
ぱっと見穏やかに寝ているだけのような螢は遥か向こうの世界では自分の限界をも越えて戦っている。SAOでの因縁を絶つために立ち向かっているキリトを守るために……。
「……体に危険は、無いんですか?」
恐る恐る訊いたその問いに藍原は厳しい表情のまま答えた。
「体に極度に負荷が掛かるとしか……。ましてや、VR空間でこの状態になった例はありません」
「そう、ですか……」
明日奈が螢にしてあげられる事は何もない。だから、今は……
『ママ、にぃは大丈夫です。今はパパを応援しましょう。……アミュスフィアの体感覚インタラプトは、ナーヴギアほど完全ではありません。ママの手の温かさなら、きっとパパに届きます。私の手は、そちらの世界に触れられませんが……私の分も……』
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