黄巾の章
第14話 「こっちもよくわからんが……あっちもどうしたもんか」
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、傍でじっとしている。
「……愛紗こそ、鈴々に任せていいのだ。もう二日も寝てないのだ」
そう言う鈴々も、昨日は寝ていないはずだ。
「…………」
「…………」
私達はお互い、それ以上は何も言わずにいる。
鈴々のこないだの言葉は、私にも重く圧し掛かった。
私は……確かに桃香様を甘やかしていたのかもしれない。
ご主人様が現れ、朱里と雛里が仲間となり……
その智謀に、全てを委ねてしまっていた。
考えることを三人任せにしていたのだ。
そして本来は私がしなければいけない……桃香様の第一の臣として、私がせねばいけないことすらも、ご主人様に任せようとしていたのかもしれない。
ご主人様と、そう呼んでいるが……彼は……桃香様の臣ではないのだから。
(桃香様なら、私達も臣でなく……あくまで仲間として平等だ、とおっしゃるのかもしれない)
桃香様にとって、私も、鈴々も、ご主人様も……大事な仲間なのだ、と。
だが……仲間であるからこそ……頼りすぎてはいけないのだ。
仲間とは……お互いを支えるものなのだから。
(まさかそれを……鈴々に諭される日がくるとはな)
負うた子に教えられ……まさにそんな言葉が似合うのだろう。
我々の中で、この短期間に一番成長していたのは……鈴々だった。
(もう、子供とはいえんな……立派な妹だ)
私には鈴々が眩しく見える。
ただのやんちゃな娘だと思っていたのだが……
その鈴々も、嗚咽する桃香様に声もかけない。
わかっているのだ。
これは、桃香様自身が乗り越えなければならないものだと。
だから……私も。
「っ……くっ……ひっ……ふぅ……」
くっ。
思わず、唇を噛む。
桃香様の嗚咽……本来ならば、すぐにも駆け寄って慰めて差しあげたい。
だが、それでは……
それでは、元の木阿弥だ。
(耐えてください、そして乗り越えてください、桃香様)
私は、心でそう念じて唇を噛む。
その口元から出る血を、そっと鈴々が拭いてくれたのだった。
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