黄巾の章
第14話 「こっちもよくわからんが……あっちもどうしたもんか」
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主人様と呼んだその人を、心の中では名前で呼び続けている私。
(私は、彼を……利用していた?)
うまくいけば、彼の力で立身できると、全部任せていた?
考えず、ただ身を任せていれば、いずれはこの国を救えると思っていた?
なにもせず、ただ、徳がある、とだけ言われて……ただ、そこにいるだけの人。
まるで――御輿。
(私こそが……盾二さんにとっての御輿だったんだ……)
きっと彼は、そんなことは思っていない。
あくまで彼は、私を主君にするつもりかもしれない。
でも……私がそれを放棄した。
(私は……彼を仲間ではなく、臣と思い始めていた?)
そう考えた自分に、涙が溢れ出す。
私は利用したのだ。
彼の義を。
彼の想いを。
彼の……優しさを。
「うっ……うっ……ひっく……ひっ……」
彼は私に言った。
力を貸す、と。
それに対して、私は何をした?
彼のために何をしたのだろう?
(この世界で右も左もわからない俺を救ってくれた)
違うんです。
私は誰も救ってない。
貴方は、ただ私の前に現れたから……
ただ、ほんのちょっと手助けしただけ。
(一刀を医者に見せるために労を惜しまず奔走してくれた)
私は……なにもしていない。
(俺達のような……戦場で生きるしかなかった子供を、少しでも救えるのなら……俺は手伝いたいと思う)
手伝う……そう言ってくれたのに。
私は、全てを押し付けた。
人の上に立つ重責も、人に命令するつらさも……
そして、考えることすらも。
(君の大志は、未完成だろうけど……間違っちゃいない)
私の……大志。
私は……皆が笑う世の中にしたい、だけ……
(お姉ちゃんは……お兄ちゃんを、まるで神様かなにかと思っているように鈴々には見えるのだ)
!
は、はは……
あはは……
そっか……
かみさま、だったんだ。
私は、盾二さんを……人でない、なにかと思ってたんだ。
……バケモノ、と。
「……っ……っ……あぁぁ……あっく……ぁ……ふぅ……っ……」
私の涙は、止めどなく。
ただ、ただ……嗚咽だけが……
私の口から漏れていた。
ーー 関羽 side ーー
馬車の幌の中から、嗚咽のような声が聞こえる。
また、なにかに負い目を感じて泣いているのだろうか?
桃香様……
「……鈴々、お前は歩いてもいいのだぞ?」
私は隣にいる鈴々に声をかける。
鈴々は、ここ数日続く桃香様の嗚咽を、ただじっと聞いている。
桃香様を慰めるわけでもない。
桃香様を叱咤するわけでもない。
ただ
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