黄巾の章
第14話 「こっちもよくわからんが……あっちもどうしたもんか」
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番は家族である一刀なのだが……
(それとも桃香は……俺を家族と思ってくれているのだろうか?)
ご主人様と呼び始めたあの日。
あれはそういう意味なのか?
だが、俺は彼女から告白を受けたわけでも、義兄弟になりたいといわれたわけでもない。
だからあくまで俺の立場は、”恩人に力を貸している”に過ぎない。
(個人的には嫌いなわけじゃないけどな……彼女の立身出世の為に動いているのだって、彼女の為だ)
今後のこともある。
いろんな将の所に何年も放浪するのまで付き合うわけにはいかない。
俺と一刀は、歴史の部外者なのだ。
いつ元の世界に戻ることになるかもわからない。
だからこそ俺がいる間に、彼女にはしっかりとした基盤を持って、主として自国を統治してもらいたい。
そのときが――
(恩を返し終えて……彼女達と別れるときなのかもな)
そう思いながら再度、彼女の籠もる馬車を見る。
俺と一刀という異邦人を救ってくれた女性は――顔を見せることはなかった。
―― 劉備 side ――
(お姉ちゃんは考えていることをやめているのだ)
鈴々ちゃんの言葉。
ずっとずっと、私の中に木霊する言葉。
(お姉ちゃんは何をしているのだ?)
私は……なにをしているの?
(お兄ちゃんはお姉ちゃんをできるだけ立てるようにしているけど、お姉ちゃんはお兄ちゃんになにかしてあげられているのか?)
私は……盾二さんの言うとおりにして……して……
なにを、してあげられたの?
(貴方の恩義に報いることを誓う!)
私の恩義?
私はただ……あの時、倒れていた一刀さんを医者に見せようとしただけ。
治したわけでも、盾二さんの命を救ったわけでもない。
それなのに、たったそれだけのことをしただけなのに。
盾二さんは、『恩義』と言って私に尽くしてくれている。
(今のお姉ちゃんはおかしいのだ)
鈴々ちゃんの言葉が、私の胸をえぐる。
桃園で誓った頃、私は二人の信頼に応えるために、どうしたらこの国が良くなるか、必死に考えた。
だから例え偽善であろうとも、私の思うことをしようと心に決めた。
だけど……今はどうだろう。
私は、この国が良くなる方法を考え続けていただろうか?
偽善とわかっていることを、自分の責任でやろうとしていたあの頃と今の私はどうだろうか?
(お姉ちゃんを甘やかしちゃだめなのだ)
鈴々ちゃんの言葉は正しい。
正しすぎる。
私は……盾二さんに全てを委ねて……甘えていた。
(心の底で、私は盾二さんを認めていなかった……ううん。ちがう)
盾二さんを……ご
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