黄巾の章
第14話 「こっちもよくわからんが……あっちもどうしたもんか」
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からん。
「こっちもよくわからんが……あっちもどうしたもんか」
俺は呟きつつ、後方を見やる。
そこには愛紗と鈴々が手綱をとる馬車があった。
その後ろの幌の中には、桃香がいる。
洛陽から出発する頃から、桃香はよく塞ぎこむようになっていた。
理由はよくわからない。
具合が悪いのかと尋ねても、まるで怯えるようにその場を離れてしまう。
(俺、なんか嫌われるようなことしたか?)
まったく覚えがない。
移動中はいつもの笑顔もなく、馬車の幌の中で俯いている。
桃香も出発した頃は、皆と同じで普通に歩いていたのだが……時折考えては立ち止まり、歩いては遅れていく。
さすがに心配になって声をかければ、なんでもないと言うだけ。
行軍が遅れるので、輜重隊の馬車を一台仕立てて乗せたのだが……
「なんや……ああ、桃香かいな。あんさん、なんぞしよったんか?」
俺の様子に、霞が振り返って声をかけてくる。
「するわけないだろ。俺にもよくわかんないんだ。洛陽を出た頃から様子が変で……一昨日辺りからは食事もほとんどとってない。病気じゃなきゃいいんだが……」
「あたしもそれとなく話しかけているんだけど……話してくれないんだよ。なんかに悩んでいるらしいんだけどな」
「んー……一応副官扱いやし、あんまり仕事しないのも困るんやけど……愛紗や鈴々はなんか知っとらへんの?」
「いや……愛紗は『今はそっとしておいてください』としか言わないんだ。鈴々は『お姉ちゃんは考え事をしているのだ』って言うだけだし……三人で何かあったのは間違いないみたいだけどなあ」
そう、二人が桃香のことを心配してないわけがない。
にもかかわらず放置している、ということは……なにか大切なことなんだろう。
「あんさんにも言えへんことか……あっ、まさか月のモノ――」
「下ネタはやめぃ」
「ちぇー」
霞は口を尖らす。
俺に言えない事、か……
まあ、俺は劉備の臣でない。
義兄弟でもない。
あくまで力を貸す立場だ……そして恩を返すために彼女に力を貸しているに過ぎない。
家族ではない……一刀とは違う。
だが……一刀の命の恩人であり、仲間でもある。
(そう思えば、変な関係だよな。俺の周囲は……)
桃香たち三人に『ご主人様』と呼ばれているが、実質は恩人に力を貸しているに過ぎない。
朱里や雛里、そして馬正は、分不相応だが俺を”主”として、忠誠を誓ってくれている。
だが、桃香や愛紗、鈴々にとって俺は、理想を実現するための”仲間”でしかない。
桃香たちと朱里たちでは立場が違うのだ。
ゆえに、人の上に立つ俺としては……恩人も大事だが、自分を主とする存在のほうが大事だ。
もちろん、一
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