暁 〜小説投稿サイト〜
真・恋姫無双 矛盾の真実 最強の矛と無敵の盾
黄巾の章
第14話 「こっちもよくわからんが……あっちもどうしたもんか」
[2/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
からん。

「こっちもよくわからんが……あっちもどうしたもんか」

 俺は呟きつつ、後方を見やる。
 そこには愛紗と鈴々が手綱をとる馬車があった。
 その後ろの幌の中には、桃香がいる。

 洛陽から出発する頃から、桃香はよく塞ぎこむようになっていた。
 理由はよくわからない。
 具合が悪いのかと尋ねても、まるで怯えるようにその場を離れてしまう。

(俺、なんか嫌われるようなことしたか?)

 まったく覚えがない。
 移動中はいつもの笑顔もなく、馬車の幌の中で俯いている。
 桃香も出発した頃は、皆と同じで普通に歩いていたのだが……時折考えては立ち止まり、歩いては遅れていく。
 さすがに心配になって声をかければ、なんでもないと言うだけ。
 行軍が遅れるので、輜重隊の馬車を一台仕立てて乗せたのだが……

「なんや……ああ、桃香かいな。あんさん、なんぞしよったんか?」

 俺の様子に、霞が振り返って声をかけてくる。

「するわけないだろ。俺にもよくわかんないんだ。洛陽を出た頃から様子が変で……一昨日辺りからは食事もほとんどとってない。病気じゃなきゃいいんだが……」
「あたしもそれとなく話しかけているんだけど……話してくれないんだよ。なんかに悩んでいるらしいんだけどな」
「んー……一応副官扱いやし、あんまり仕事しないのも困るんやけど……愛紗や鈴々はなんか知っとらへんの?」
「いや……愛紗は『今はそっとしておいてください』としか言わないんだ。鈴々は『お姉ちゃんは考え事をしているのだ』って言うだけだし……三人で何かあったのは間違いないみたいだけどなあ」

 そう、二人が桃香のことを心配してないわけがない。
 にもかかわらず放置している、ということは……なにか大切なことなんだろう。

「あんさんにも言えへんことか……あっ、まさか月のモノ――」
「下ネタはやめぃ」
「ちぇー」

 霞は口を尖らす。
 俺に言えない事、か……
 まあ、俺は劉備の臣でない。
 義兄弟でもない。
 あくまで力を貸す立場だ……そして恩を返すために彼女に力を貸しているに過ぎない。
 家族ではない……一刀とは違う。
 だが……一刀の命の恩人であり、仲間でもある。

(そう思えば、変な関係だよな。俺の周囲は……)

 桃香たち三人に『ご主人様』と呼ばれているが、実質は恩人に力を貸しているに過ぎない。
 朱里や雛里、そして馬正は、分不相応だが俺を”主”として、忠誠を誓ってくれている。
 だが、桃香や愛紗、鈴々にとって俺は、理想を実現するための”仲間”でしかない。

 桃香たちと朱里たちでは立場が違うのだ。
 ゆえに、人の上に立つ俺としては……恩人も大事だが、自分を主とする存在のほうが大事だ。
 もちろん、一
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ