黄巾の章
第13話 「今のお姉ちゃんは、桃園で誓ったお姉ちゃんじゃない気がするのだ」
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つ、これ以上俺たちに功を立てさせないつもりか!
「……もしかして、諸侯までも露払いにさせて、本拠はそいつの兵で攻めるつもりか?」
「そこまで読めるんか。さすがやね……うちの賈駆っちとええ勝負やな」
「……? どういうことだ?」
翠は、わけがわからない、といった顔で尋ねてくる。
桃香に至っては、ニコニコしているだけだ。
これはなにもわかってないな……
「ようするにだ。俺たち……董卓軍の武将が抜群の功をあげた。このまま黄巾の本拠まで叩かれたら、董卓殿に対する帝の信頼は、宦官どもを越える恐れがある。だから、それを越える功は宦官の息のかかった武将に与えて、俺たちは下っ端を相手にしていろ、という命令なんだよ」
「なっ……」
「まあ、概ねそんなところやな。その上、諸侯集めたのも、帝の詔と称してその武将を総大将に据えるつもりなんやろ……そうすりゃ、兵の損失は諸侯、名は宦官子飼いの将ってことになる……まあ、賈駆っちの受け売りやけどな」
「なんだと! 手を汚さず、損害も出さず、功だけ自分達のものにする気か、あいつら!」
翠が憎々しげに叫び、台を叩く。
俺は宦官を知らないが……相当ふてぶてしく、いやらしい性格してるんだろうな。
そもそも、宦官ってなんだったか。
「ちなみにその『張譲』ってやつ、どんなやつだ?」
「いやらしい狒々爺や。宦官ってしっとるか?」
「いや……役職なのはわかるが」
「ようするに……男のアレを切ったやつや。そんで帝のお傍に仕えとる。そいつらが十人ほどいてな、十常侍と呼ばれとるやつらの筆頭や」
江戸幕府の側用人のようなものか。
なるほど……となると腐敗の温床だな。
「ふむ……そうなると、帝の寵愛がないと生きていけない、そんな連中だと?」
「まあ、ある意味そうやな。そんな奴らが政務を担当しとる。相当腐っとる連中やよ。せやから、保身にだけはとんでもない執念をもっとる」
「……そうか」
なるほど……後漢末期の衰退の原因は、漢王朝の腐敗とは知っていたが……ここまでとはな。
いや、俺が後の歴史を知るだけであって、霞や翠、桃香たちには現在の問題なんだよな。
民主共和制なんて、この時代には欠片もないしな……
だが……今は、俺たちの問題でもある。
(一刀が起きたときに、この世界に幻滅させたくはないしな……)
汚いところは、俺がなるべく濯いでおきたい。
……いっそ俺が帝宮に忍び込んで、宦官を残らず殺すか?
いや……確か歴史だと、董卓が殺してくれるはずだ。
だったら、今無理に宦官どもを始末して、歴史の大本を変えてしまっては……今後どうなるかもわからなくなる。
歴史の改竄……それはアーカムの理念に照らし合わせれば禁忌。
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