エピローグ:見よ、魔女が帰る
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君も食べてみるか? モニターは多いほうが嬉しいし」
「辞めとく。 なんか怖えーし。 で、なんでカリーナは下着姿なんだ?」
「さっきオレンジ味のアイスキャンディーを食べたときに服にこぼしてしまってね。 代わりの服を着せようにも、この砦のシルキー達に提供を断られてしまったらしい」
説明されてしまえばなんて事は無い話だ。
「ったく……紛らわしい……ほら、帰るぞ。 街に戻ったら今日は自棄酒だ、クソっ」
恥ずかしい想像をしてしまった後ろめたさからか、クリストハルトの顔に僅かに朱が混じる。
「……嫌」
「はぁっ!?」
さっさと人間界に帰るべく手を差し伸べたクリストハルトだが、カリーナはその手を取ろうとはしなかった。
「このお菓子の作り方を覚えて帰る。 覚えるまで帰らない」
「なっ、何ガキみたいなこと言ってるんだ! とっとと帰るぞ!!」
「帰るならハルト一人で帰ればいい」
「おまえなぁ……元々菓子がすきなのは知っているが、なにをとち狂ってやがる。 お前を一人にするなんて、俺に出来るはずが無いだろ!!」
そんな事が出来るはずも無い。
惚れた弱みもあれば人道的にもありえない。
だが、続いて紡がれたカリーナの台詞に、クリストハルトは冷水を浴びせられたかのような気分になった。
「知ってるでしょ? 私は勇者じゃなくて、本当はお菓子屋さんになりたかった。 ねぇ、私はいつまでこんなことをしてなきゃいけないの? どうして私がお菓子屋さんになっちゃいけないの?」
彼女がまるで人形のように無表情になったのは、勇者として選ばれてからのことである。
魔物を殺戮する日々は、まともな感性を備えた少女には過酷過ぎたのだ。
「……お前には悪かったと思ってるよ。 だが、人生はいつでも一方通行だ。 文句を言っても過去は変わらないし、俺は別の形で責任を取るつもりだ。 それに魔界でどうやって生活するつもりだ!? お前が魔界に残るなら、俺も人間界に帰るつもりは無いぞ」
彼女の中に勇者としての資質を見出し、魔術を仕込んで殺伐とした世界に引き込んだ組織の一員がクリストハルトだった。
それゆえに、クリストハルトには彼女の人生を守る義務がある。
少なくとも本人はそう考えていた。
だから彼女の願いはかなえられない。
絶対にだ。
それに……仮に勇者であることを捨てて魔界に暮らそうにも、その魔界の民が許さないだろう。
我々は多くの血を流しすぎた。
だが、その太陽が東から昇るのと同じぐらいゆるぎない大前提は、横から口を出してきた女妖精によってあっけなく覆される。
「なら、私の店にくるといい。 手を出すなら料理を食わせないといえば、まわりの魔族も文句は言わないだろうし。 お菓子作りの専門家として働いてくれるなら歓迎する
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