Episode 3 デリバリー始めました
屋敷妖精達とお座敷戦争
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ない男だった。
無敗など、自分より弱いヤツと戦っていれば幾らでも達成できる。
本当に大事なのは、ただ生き残ることのみ。
それが戦士としての彼の持論だった。
名の知れたの戦闘狂でありながらも状況を冷静に判断し、自らの引くところを判断できる素質……それこそがこのクリストハルトという男の一番恐ろしいところである。
だが……
「暴れるだけ暴れておいて、そのまま帰るというのは少々虫が良くないですか?」
ふと聞こえてきた少女の声に、クリストハルトはなぜか危険を覚えて周囲を見回した。
……階段の手摺がしゃべってる?
先ほどの毒と一緒に、何か幻覚剤でも撒かれたのだろうか?
「あぁ、階段の手摺についている板をスピーカーの振動版に使っているだけ……といってもわかるはずないですね。 まぁ、結論を言うと、私はそこにいないって事です」
――なんだ、こいつは!?
「ハルト……何か、嫌な予感がする」
珍しくカリーナが不安げな声を上げてクリストハルトの空いた手をギュッと握ってくる。
その握られた手は緊張のためか冷たい汗がじっとりと滲んでいた。
「俺から離れるなよ」
力強く答えを返したクリストハルトだが、彼自身もまた恐怖していた。
こいつは今まで自分が相手をしてきた奴らとは何かが違う。
判らない――この、憎しみでもなく嘲るでもなく、まるで移る水面の向こう側を見ているような無関心さは何だ?
言っていることの意味が判らない事が恐ろしいのではない。
何か、根本的にモノの考え方が違う、人間界でも、この魔界たるモルクヴェルデンの住人とも違う異質なる知性が恐ろしい。
それはこの砦を守る妖精達をしても同じなのか、ただ得体の知れない恐怖に晒され、その顔に不安を貼り付けたままじっと様子を伺っている。
「そうそう、こういう話の場合、魔王がお姫様を掠うのが定番でしたっけ。 せっかくなので再現してみようと思いますが、あいにく王子様っぽい人もいないので、演出は大目に見ていただけるとうれしいです」
その言葉と同時に、今まで感じたことも無い理力の脈動が足元を過ぎる。
「きゃあぁぁっ!!」
耳元で放たれたカリーナの悲鳴に振り返ると、その足元が沼地に踏み込んだときのようにズブズブと地面にめり込んでゆくところだった。
「カリーナ! な、なんだ……この床! やめろ! ふざけんな! そいつは俺んだ!!」
この現象が屋敷妖精達が使う理力であることは間違いは無い。
だが、いかなイマジネーションがこんなデタラメな理力の行使を可能にしているのか?
――実際には人間時代に聞きかじったアニメの知識を元に物理法則をいじり倒しているのだが、彼等がアニメーション文化というデタラメな思考回路を理解することは永遠に無いで
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