暁 〜小説投稿サイト〜
ジークフリート
第二幕その四
[1/2]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話

第二幕その四

「これからも長くな」
「受けるつもりはない」
 こう返す竜だった。
「そんなことはな」
「受けぬというのか」
「わしはここにいる」
 彼はアルベリヒに対して答えた。
「横になってわしのものを守る。このままな」
「失敗したな」
 さすらい人はすぐに彼に告げてきた。
「どうやらな」
「ふん、何ということだ」
「私は善意のアドバイスをした」
 ここでこのことを言ってみせるのだった。
「それは言っておこう」
「それでどうだというのだ?」
「最早貴様に悪党と言われる謂れはない」 
 彼は告げた。
「それは言っておくぞ」
「聞くつもりはない」
「だが確かに忠告はした」
 彼はこのことを強調する。
「それはな」
「ではどうだというのだ」
「最後にまた言っておこう」
 そしてさらに言ってきた。
「よく覚えておくことだ」
「何を言うつもりだ?」
「全てはなるようになるものだ」
 このことを告げるというのである。
「全てはな」
「貴様が言う言葉ではないな」
 アルベリヒはまたしても忌々しげな顔になっていた。
「それはな」
「そう思うのなら思えばいい」
 またそれには構うところはないというのであった。
「だが告げた」
「まだ言うのか」
「御前は何も変えることはできないのだ」
 そうした意味で自分と同じだというのだ。
「自分ではな」
「その言葉忘れるな」
 アルベリヒの声の剣呑さは増していく。
「絶対にな」
「無論貴様が何を言いたいのかもわかっている」
 さすらい人の言葉に微かに陰が指した。
「その子を作れなくなった貴様がな」
「わしの髭は全て落ちてしまった」
 見ればその通りだった。かつてはあったその髭は全くない。それが何故かというとこれこそが彼が愛を捨てたということの証なのである。
「だが子は作れたのだ」
「おかしな方法でだな」
「愛がなくともだ。そして髭がなくなろうともだ」
「ニーベルングの技術でだな」
「そうだ。作れるのだ」
 そうだというのである。
「子もな。それは言っておく」
「確かに聞いた。だが」
「だが?」
「精々しっかりとやることだな」
 さすらい人は話を戻してきた。
「それを忠告しておこう」
「その忠告をして去るつもりか」
「少なくともここは去る」
 彼は言った。
「ミーメとやり合うのだな」
「あいつとか」
「そのやり方は貴様が最もよくわかっているな」
 これについてはというのである。
「そうだな」
「あいつは昔から愚図だった」
 兄弟でありながらお互いにいい感情はないのだった。
「あの臆病者ならば恐れることはない」
「では好きにするがいい」
 こう言って去ろうとした。
「ではな」
「謀りを
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ