第5章 契約
第63話 龍の巫女
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。軍人らしき姿の存在も居れば、街のおばさん風の人も居る。そして、その中には、当然のように老人や子供の姿も……。
その表情はどれも同じ。無に等しい表情を浮かべ、その瞳にのみ、妖しい光を湛えたその姿は、何故か、ラ・ロシェールの街を襲った魔物たちを彷彿とさせた。
そう。その表情。そして、彼らが発する雰囲気は、明らかに境界線を越えた向こう側の存在たち。
刹那。俺と、湖の乙女の二人を視認した無表情の人々が、その無秩序の歩みを止めた。いや、違う。彼らの歩みは、最初から完全に無秩序な歩みと言う物ではなかった。
軍靴が。木靴が。革製の靴が。中には、素足の発するペタペタと言う音も混じっては居ましたが、その足が発する音は規則性に支配されて居り、発する瞬間は皆同じ。まるで、統一された意志の元、ここまで訓練の行き届いた軍隊の如き整然とした行軍を行って来ていたのだ。
そして、次の瞬間。まるで、雪崩が起きるような唐突さで、その無秩序な編成の軍隊が無表情な顔をこちらに向け、妖しい光を放つ、しかし、死んだ魚のような瞳に俺と湖の乙女を映し、俺達二人に向けて襲い掛かって来たのだ!
その彼我の距離は十メートル足らず。一瞬にして呑み込まれ、二人が蹂躙されるのに、一分の時間も必要とはしないだろう。
しかし、そう、しかし!
一瞬の判断で傍らに立つ湖の乙女を抱え上げ、上空に退避を完了する俺。
そして、その上空に退避した俺達二人に殺到した、風と火と水と土。そして、属性の定まっていない物理にも等しい悪意の塊も、俺の腕の中に存在する少女が施した魔力の砦に因って、すべて阻まれて仕舞った。
「意志を感じさせない表情。そして、妖しく光る瞳……」
俺は、独り言を呟くように、そう口にした。
相変わらず続く、地水火風、更に物理魔法に因る攻撃と、投石、矢、そして、マスケット銃による攻撃に晒されながら。
まるで何者かに操られたかのような、統一された意志による攻撃。その、陰気に包まれた妖しく光る瞳に彩られた軍隊を、上空約十数メートルの位置から睥睨しながら、
「湖の乙女。あいつらの精神支配を解き放つ方法は有るか?」
……と、問い掛ける俺。
そう。暴徒と化した普通の状態の街の住人や、軍属たちを無力化する事は簡単です。ラ・ロシェールで山賊を縛った時のように、植物を操って身体を拘束すれば簡単に無力化する事は出来るでしょう。
但し、通常の相手ならば。
しかし、現在の彼らの状況から推測すると、コイツらは違う。この上空を見上げている連中は、少々の拘束程度では、無理矢理に引き剥がそうとする可能性が高いと思いますから。
何故ならば、腕や、足を失ったトコロで、精神を支配している存在に取っては、蚊に刺されたほどの痛痒
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