暁 〜小説投稿サイト〜
蒼き夢の果てに
第5章 契約
第63話 龍の巫女
[4/12]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
たような視線と、普段よりは柔らかい湖の乙女の視線が、丁度俺の肩ぐらいの位置で交わる。
 そして、

「おはよう」

 俺の左腕を枕の代わりにした湖の乙女が、普段とまったく変わりのない落ち着いた雰囲気の口調で、そう朝の挨拶を行って来た。
 非日常の中の日常。
 そして、彼女の発して居る雰囲気は陽。朝の目覚めの際に発せられる気としては、とても良い一日が過ごせる事が間違いない、と言う雰囲気を発して居た。

 成るほど。彼女が発して居るのは間違いなく幸福感。

「おはようさん」

 取り敢えず、双方共に寝間着は、昨夜眠りに就いた時に着て居た状態なので問題はない。そう考えてから、落ち着いた雰囲気で朝の挨拶を返す俺。
 但し、相変わらず、お互いの吐息の掛かる距離、ついでに、鼓動を直に肌で感じる状態で見つめ合った二人の朝の挨拶なのですが。

 この状況は、普通に考えるのならば、間違いなくのっぴきならない状況と言う状況ですか。

「若干の血圧の上昇。及び体温、心拍数の増加がみられるが、誤差の範囲内」

 微かに首肯いてから、そう答える湖の乙女。その時に、初めて左腕に彼女の頭が乗っている事を感じた。おそらく、何らかの方法で、彼女自身が俺の腕に重さを伝えないようにしているのでしょう。
 もっとも、この状況下では、いくら低血圧の俺でも、少々の血圧が上昇したとしても不思議ではないとは思いますけどね。

 確かに、普段から平静を保つ事が出来るように訓練や修行は行って居ます。しかし、いくら普段から平静を保つ努力をしているとは言っても、この異常な状況下では流石に……。

「なぁ、湖の乙女(ヴィヴィアン)。ひとつ、聞いても良いかな?」

 狭い畳一畳分のスペースに敷いた布団の中で、殆んど俺の胸に顔をうずめるような形で横になる湖の乙女。しかし、これほど密着した状態でも、彼女に対する警戒心のような物は発生せず。
 矢張り、俺に取って彼女の姿形と言うのは、心の奥深くに刻み込まれた物が有ると言う事なのでしょうか。

 そして、俺の問い掛けに対して、寝起きの俺の顔をじっと見つめた後に、再び、微かに首を上下させる湖の乙女。
 良し。これは肯定されたと言う事です。それならば、

「確か、オマエさんが昨夜寝たのは、本来、俺に与えられた寝台の上で、俺の方がハルファスに準備して貰った畳の上に布団を敷いて寝たはずなんやけど、翌朝目が覚めてみたら、オマエさんが俺の腕の中に居る。
 この理由を、出来る事ならば教えて欲しいんやけど」

 もっとも、俺が眠ってから、彼女が俺の布団の中に潜り込んで来ない限り、こんな状況には成らないとは思うのですが。
 更に、ついでに言うのなら、何故、俺が彼女を抱きしめた感覚に、妙な既視感のような物が有るのかについ
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ