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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第63話 龍の巫女
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れていた場合には、その方法では判らないのですが……。所謂、木の葉を隠すには森に隠せ、と言う状況に成りますから。
 その場合は、書類をいちいち確かめるような細かな作業を繰り返す必要が有るので、一週間以内……同室の連中が帰って来る半舷上陸の終了までの事件解決は難しいですし、俺自身が艦隊の砲術担当として潜り込んで居るのに、兵站部門の書類の細かなチェックを行うのはかなり怪しい動きと成るので、少しの小細工が必要と成るのですが。

 俺のその問い掛けに対して、ほぼ、動いたのか、それとも動いて居ないのか判らないレベルで、微かに首を上下に動かす事に因って肯定と為す湖の乙女。彼女の行動をつぶさに確認している上に、霊道で繋がっている俺だから確認出来る、彼女の微かな仕草。

「そうしたら、さっさと食事を終わらせて、今日は終わりとしますか」

 幸いにして、半舷上陸中でこの部屋の住人は俺だけ。いや、むしろ、そう言う部屋に入れられるように、ワザとこの部屋の住人達が半舷上陸中に俺が放り込まれたのでしょうけど、これで、この見た目タバサそっくりの美少女姿の水の精霊と、くっ付くような形で眠る必要はなく成ったと言う事ですから。
 それだけでも、精神的には大分、楽には成りましたか。

 そんな俺の考えを気付いて居るのか、それとも、普段通り、我関せずの姿勢を貫いているだけなのかは判りませんが、それでも、真っ直ぐにメガネ越しのやや冷たい視線で俺を見つめた後、彼女は微かに首肯いて答えてくれたのでした。


☆★☆★☆


 甘い香りが鼻腔を擽り、適度に湿り気を帯び、そして、とても柔らかくて温かい物体が両腕の中に存在していた。
 これは……。

 ある程度の大きさを持ったそれは、あまり体験した事のない、それでいて何故か触り慣れた……。いや、抱き慣れたような不思議な既視感を両の腕と、そして、それほど厚くはない自らの胸板に伝えて来て居た。
 しかし、俺の布団の中に一体何が……。

 甘い香り?

 かなり寝惚けた頭で、少し強く、その温かくて柔らかい物体を抱きしめてみると、適度な弾力と、そして、先ほどよりも更に強く香る、甘い香りが鼻腔から肺を満たして行った。

 いや、この甘い香りには覚えが有る!

 そうやって寝ぼけた頭で理解した瞬間、眠気を気力で吹っ飛ばし、再び瞑ろうとする両の瞳を無理矢理に開ける俺。
 その視線の先。距離にして三十センチもない位置に、その少女のメガネを掛けていない状態の整った容貌が存在して居た。
 そう。この鼻腔を擽る甘い香りは、彼女の肌の香り。そして、腕が覚えて居る彼女の温もりと彼女の形。

 矢張り、彼女にメガネが与えている印象が、より怜悧な印象と、そして、やや冷たい雰囲気を与えているのは間違いない。

 俺の寝惚け
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