第5章 契約
第63話 龍の巫女
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既に北花壇騎士団とガリア両用艦隊の間で話が通って居るのは確実なのですが。
まして、もし、艦隊司令クラスの人間が物資の横流しに関与していたのならば、もっと確実な偽装工作。例えば、訓練などで消費した物資の量を過大に報告して、書類上からは不審な部分を感じさせる事のない状況を作る事も可能だと思うのですが……。
其処まで考えてから、その瞬間に、ガリア王国内政の裏の部分に、かなりの政治力を持つおデコの広い姫さんの顔を思い浮かべる。そう。俺の少し足りない頭が思い付く程度の偽装工作を行って居ても尚、イザベラの周囲に居る密偵や官吏の目を誤魔化す事が出来ずに、前任者や俺の元に仕事が回って来た可能性も少なくはない、と思い直しましたから。
何故ならば、あの姫さんは、俺が湖の乙女と契約を交わした直後に、ガリアが湖の乙女。いや、ラグドリアン湖の精霊の身柄を護る事を約束して、トリステインとの有名無実と化して居た盟約を破棄させ、ガリアと湖の乙女との間で交わした新たなる盟約を創り上げるようなマネが出来たのですから。
その他の例から考えてもあの姫さんの周りを固めるブレーンは、この世界的に言うのならば、かなり優秀な連中が居るのは間違い有りませんか。
少しの空白。それは、思考を纏める時間。そんな俺の様子を、水の精霊に相応しい澄んだ瞳で見つめ続ける湖の乙女。
その結果得られる、非常にシンプルな結論。ひとつの方向からのアプローチが行き詰まったのですから、別の方向から考えてみるしか方法がないでしょう、と言う物。
そして、
「風石や火石は精霊力の塊。……と言う事は、一か所に大量に存在していたのなら、間違いなく巨大な精霊力として感じる事が出来るな?」
顎の部分を右手の人さし指と親指で摘まむように、そして、その右腕の肘の部分に左手を当てた、所謂、考える者の仕草で湖の乙女に問い掛ける俺。
どうやら現在判っている事実からだけでも、物資の移動の命令書を偽造出来るレベルの人間が物資横領犯の一味に存在して居る事は確実のようですから、相手は簡単にはシッポは出さないでしょう。
それならば、明日は一日掛けて街中を調べ回り、不自然なまでに精霊力の集まった個所を探すだけ。
刑事は靴を履き潰してナンボ、と言う、至極アナクロニズムな捜査に変わると言う事です。
更に、もしこの事件が単なる物資横領事件などではなく、もう少し大きな事態に繋がっている事件ならば、その動きに……事件の黒幕の動きに対処する為に、街中の龍穴を調べて、多少の小細工を施して置く必要も有りますからね。
流石に、すべて土地神頼みでは、土地神以上の存在が顕われた時に、こちらの状況が不利に成り過ぎますから。
もっとも、もしも、その横流しされた物資が軍関係の倉庫に一時的に保管さ
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