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男女美醜の反転した世界にて
反転した世界にて7 (裏)
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はゆっくりと、屋上の扉の方――馳せ参じた翔子の方へと振り返る。――実際には、拓郎は誰かがやってきたことに気がついて、弾かれるように体の向きを反転させたのだけど、翔子の目には、拓郎の動作はとてもゆったりとしたものに見えてしまったのだ。

「……」

 翔子の目に映る拓郎は、いつもの眠たげな無表情だ。何を考えているのか、何を思ってこの場所に来てくれたのか。その面構えからでは、何一つとして読み取ることは出来ない。 
 ――初めは、翔子もそんなミステリアスでクールな雰囲気の拓郎に、ただ憧れていただけの一人だった。
 高嶺の花とは、まさに正鵠を得た表現で、お付き合いをしたいとか、仲よくなりたいと考えるより、離れたところから眺めていられればそれで十分だった。例えば授業中とか。彼が居眠りから起きた直後、眠り足りなさそうに瞼を擦っているところなんかを遠くから観察しているだけでも。それが出来るというだけでも、翔子にとっては幸せなことだったのだ。

「! ……」

 扉からフェンスまでの距離が離れているうえ、風も強い。
 だから拓郎が口動かしていることはわかったが、翔子はその声を聞き取ることが出来なかった。――けれど、拓郎が不器用そうに微笑んでいたことだけは、翔子にも伝わった。
 ――そう。その笑顔だ。
 それは、昨日のこと。文化祭の出し物を決めるため、クラスメイト達が総出で議論を白熱させていた時のこと。
 翔子は高揚したテンションに身を任せて、拓郎に話しかけた。
 この時、拓郎は急に話しかけられて、ひどく狼狽していたように見えた。次の瞬間には、『目に毒だからあっちいって』とかって言葉が拓郎の口から飛び出すかもしれないと、翔子は覚悟していたのだったが。

『……? ど、どしたの赤沢さん』
『べべべ、別に。そっちこそ、どしたの?』

 ――あの時垣間見た、はにかむような微笑に、翔子はやられてしまったのだ。
 今まで数々の男子から蔑まれてフラれて続けていた翔子はそれだけで、彼が自分に対して嫌悪感を抱いてはいないのだと確信してしまった。
 その笑顔をもっと見たいと――仲良くしたいとか、お付き合いしたいと、本気で考えるようになってしまったのだ。

「……し、白上さん? なにかあったの?」
「う、んにゃ、気にしないで、えへへ」

 恐る恐る、拓郎の方へと歩を進めていた翔子。
 風の吹く屋上の上であって、お互いの声がはっきりと聞こえてくるくらいにまで近づいているのに、拓郎は翔子から離れようとするような素振りをまるで見せない。
 それどころか、どこか様子のおかしい翔子を心配してくれている。ここに至って、翔子はようやく自分の早とちりの勘違いを反省するのだった。

「気にしないでって言われても……」
「そ、それより! その、伝えたい
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