反転した世界にて7 (裏)
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くれたことを喜んだものの。少なくとも今だけは、翔子をそっとしておいて欲しい。
しかし、荒井が一体何をしに来たのか、友人たちにはそれが読めない以上、無下に追い返したりすることもできない。――そもそも、友人たちだって翔子ほどとは言わずとも、非モテ系の女子に位置するグループなのだ。男の子に対して、どういう風に接すればいいのか測り兼ねているという側面も、忘れてはいけない。
「あ、あらいぐん……?」
「ん? なに?」
友人たちが、荒井に声をかけるよりも先に、翔子はパッと膝から顔を上げて、荒井の方を見つめだした。
泣きっ面に濡れた顔は、それはそれは酷いものだった。
「うぅ、えぐ……あ、あの……」
「なによ?」
唇の端を持ち上げてひくひくと痙攣させているのは、恐らく笑っているつもりなのだろう。
緩み切った涙腺からは、未だ滴がボロボロと零れて頬を濡らしている。
「あ、あがざわぐんに、そ、その……」
「おう」
ぐしょぐしょになった顔のまま、それでも無理やり笑いながら、翔子は途切れ途切れに言葉を紡ぐ。
「ご、『ごべんね』って、『いやなぎもぢにさぜで、ごめんだざい』、っで、づ、づだえで、えぐっ……」
「…………」
――この時ばかりは、友人たちも本気で翔子を哀れに思った。
そして、翔子がどれだけ拓郎に対して、深い想いを抱いていたのかをを悟る。フラれてしまったのは自分なのだから、 に 嘆いていればいいというのに。
――そんな翔子の健気さすらも、しかし、男子にとってみればそれすらも不快なものでしかないというのか。
「いやいやいや。意味わからん」
「あ、う。……ご、ごべ。ごべんなざっ、げほっ、けほっ」
「ガチ泣きしすぎだろ。ぶっちゃけ引くわ」
そんな翔子の姿を目の当たりにしながらも、その言葉を確かに受け取ったにもかかわらず、荒井の様子には何ら心を動かされた気配はない。
携帯からも、終始視線を動かすことはなかった。流石に、友人たちも黙ってはいられない。カッとなったそのうちの一人が、翔子に物申してやろうと口を開きかけたのだが、しかしそれを遮るように、荒井は言う。
「割と真面目にシリアスしてるところ、悪いんだけどさ。はやいとこ泣き止めよ」
荒井は後頭部を掻きながら、ようやく携帯から視線を動かして翔子たちの方へと向ける。
そして何でもない事のように、とんでもないこと……のように見えて、やっぱりなんでもないことを言ってのけたのだった。
「拓郎、今屋上にいるし」
◇
翔子は屋上の扉を開け放つ。立てつけの悪い引き戸の扉が、ガタンガタンとけたたましい音を響かせる。
――果たして荒井の通達通り。赤沢拓郎は、屋上のフェンスの前に佇んでいた。
拓郎
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