第一章
主人公の戯れ言
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「君は周りの子達と違ってちょっとばかし現実的なものの考え方が出来るみたいだね。子どもっぽくなくて気持ち悪いくらいだけど。ま、それについてはいいと思うよ。下手に夢を見てる奴よか、よっぽどね。
でもさ、それでも君は現実なんか何一つ見えちゃいない。現実を見ているつもりになっているだけだ。まあ、もっと大きく言えば、現実が見えている人間なんか、いやしないんだよ」
それはいつのことだったか、どこかの女教師にそんなことを言われた。
現実が見えている人間など、誰一人としていやしない。
それはきっと、俺にそう言った彼女でさえも、同じことではないだろうか。“下手に夢を見ている奴”というのは、出来もしないことやありもしないことに思いを馳せたりする先程の彼らのことを指すのだろう。そんな彼らに対して俺は単純に腹が立ったのだ。
俺が彼らの夢についてケチをつけることは間違っているのは理解している。けれど、まあ何と言うか、彼らが俺には無い何かを持っているような気がして、少し羨ましかったのかもしれない。
大げさな話になるが、人は現実を見ているフリをしているのではないかと俺は思う。そうやって他者や自身を、そして周囲の全てをごまかして生きているのではないか、と。
おそらく、それは俺も同じなんだと思う。けれど例えそうであったとしても別に構わない。事実、俺自体そうしてきたのだから。そして、これからもそれは変わらない。
夢と現実。似て非なるもの。そんなものを人生のテーマにするなんて、くだらない。
* * *
俺は深夜、机に設置されている小型ライトの光だけを頼りに、必死でノートにペンを走らせながらそんなことを考える。我ながら陰気だとは思うな、全く。
気付けば時刻は午前二時をまわっている。また時間を忘れてしまっていた。さすがにもう遅いし、今日はもう寝るか。明日から学校もあるし。
…“夢見がちな妄想なんてくだらない”か。
自分で言ったことではあるが、ほんと、くだらないな。
ベッドに横になり、またどうでもいいことに思考を巡らせる。もはやそれは、思考と呼べるものではないかもしれないけれど。
明日からまた同じ毎日の繰り返しがやってくるのかと思うと、俺の心を埋め尽くさんばかりにどんどん憂鬱な気分が押し寄せてくる。
こうなると、また逃げたくなってくる。いや、逃げるってのは語弊があるか。俺は逃げているわけじゃ、ない。
どちらにせよ、時間が過ぎれば俺の気分など関係なしに明日は来る。明日なんて来なければ、こんな気分になることもない。
まあ、それもまた、くだらないか。
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