第一章
主人公の戯れ言
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将来の夢は何か。
季節がぐるっと一周廻るたびに放たれるその言葉に、いつも喉が詰まる。
将来の夢。
将来や未来、または明日といったものは、時間が経てば向こうから勝手にやってくるものだ。それに対して準備をしたり考えたりする事に、いったいどれ程の意味があるのだろうか。
周りからすれば、こう考えることは俗に怠惰と呼ばれるものらしい。人生において限りある時間を無駄に消費しているだけだ、と。しかし俺はそうは思わない。全ては一個人の自由だからだ。俺に与えられた時間だ、全ては俺の自由だろ?
まあそれはさて置いて。ひとつの前提として、俺に夢と呼べるものはない。これといってやりたいこともないし、なりたいものもない。
何かになれるならそれでいい。何かができるならそうしよう。これが俺の基本的なスタンス。自発的に行動するのはとてもじゃないが、俺向きではない。
先程同様、俺は何かに対して夢や目標、または明確な目的といったものがあるわけではない。ただ流されて生きているとでも言えばいいか。俺自身その自覚はあるけれど、それ自体に抵抗はまるでない。誰が何と言おうと、そうやって生きて来た以上、今さら何も変わらない。
俺はただ退屈な毎日を生きるだけ。退屈な毎日とはつまり、生産的ではない日々の消化のことだ。そうやってただ消化されていく俺の人生は、とてもつまらないことこの上ない。
そんな毎日を不毛だとは思うけれど、代り映えのしない毎日に劇的な変化を望んだところで、それこそ無意味でいいことなど一つもない。夢見がちな妄想なんてくだらないからだ。
いつだったか、こんなことがあった。放課後の教室に忘れ物を取りに戻った時のことだ。教室に残って談笑にふける数名の男子生徒がいたのだが、彼らの話している会話の内容をたまたま耳にして、俺は“ふざけるな”と思ったのだ。
彼らの会話の内容は夢についてだったように記憶しているが、なぜ俺が“ふざけるな”と思ったのか。
これは備考程度なのだが俺は大して記憶力に長けているわけではない。それ故に今さら“あの時あんなことがあった”などと過去の出来事を引き合いに出してきたところで、なぜそのような感情に至ったのかという事細かな記憶はすでに九割がた欠落していると言っていい。
それでも、そんな乏しい記憶の中から僅かに残っているであろう当時の出来事を思い返し、その理由を強いて挙げるとするなら、それは単純に彼らの会話内容があまりにも現実的なものではなかったからだ。
「まあまあ。これは夢の話なんだから、細かいことはいいじゃないか」
確かに。誰もがそう言うかもしれないし、それについては俺に否定する権利はない。けれど、俺にとってはそんな簡単な話で終わっていいものではないのだ。
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