Episode 3 デリバリー始めました
猛火と愚者の殺意ある交接
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ルトと名乗った戦士の男は、全滅した砦の兵士の体を踏みこえてマルのいる砦内部へと足を速めた。
まだ砦の中にも兵士は残っているだろうが、狭い通路になれば大人数の利点を活かしきるのは難しくなる。
個人の戦力に大きく差がある現状、ここからの巻き返しは非常に難しい。
相手の体力の問題に関しては、戦士の男が大量に保持しているであろうスタミナポーション――ファンタジー特有の理不尽なポーション類があっけなく覆してくれるだろう。
この砦をあずかるボイツェフ中隊長も、すでにこの砦を放棄して本国方面に撤収する命令を部下に出していた。
――絶体絶命。
誰もがこの砦の陥落を確信していたその時。
不意に空を大きな影が過ぎり、砦全体を揺らすほどの振動と共に、一人の女妖精が配下の猫妖精2匹を連れて、砦の屋上に降り立った。
「お疲れさん。 これ、報酬の特製馬肉ベーコン3食分ね、 帰りもよろしく」
「キアァァァァァァ♪」
差し出された燻製肉の塊を嬉しそうに受け取ったのは、鷲と獅子を掛け合わせたような、全長10mを超える巨大な翼ある生き物――グリフィン。
そしてグリフィンの背から砦の屋上に降り立ったのは、遥かビェンスノゥの街の郊外にいるはずのキシリアだった。
蟹クリームコロッケに関しては余分に下ごしらえの作りおきをして保存の呪いをかけておいて今日中に戻ればいいし、たとえ馬の脚なら二日はかかる距離であっても、グリフィンの翼で最短距離を突き進むなら1時間程度しかかからない。
だが、そんな労力を支払ってまで、なぜ彼女はこんな場所までやってきたのか?
キシリアは、眼下の惨状を見下ろすと、さもつまらなさそうに呟いた。
「……困るんだよ。 まだ支払いが終わってないのにクライアントに倒産されるのは」
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