Episode 3 デリバリー始めました
猛火と愚者の殺意ある交接
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ん丸に見開かれた。
その目に映るのは、砦の屋上から押し寄せる無数のシャボン玉。
――思わず誰もが戦いを忘れ、目を擦ったり頬を抓ったりするような、なんともファンシーな光景である。
「ニャハハハハ! 問われれば答えんことも無いニャ! 人間ちんまい耳をかっぽじって拝聴するがいい。 我こそは、栄えある猫妖精の中でも特に誉れ高き、リージェン三兄弟の長兄マル! お前の借り物の力に対抗するならば、こちらも借り物の力で十分だニャ」
そう高らかに宣言するマルが手には、胴体が巨大な蟹の鋏で出来た奇妙な弦楽器が握られていた。
「ニャフフフフ……これぞ我がマスターであるキシリアが廃材のリサイクルと魔道具作成の練習を兼ねて作り出した魔楽器"蟹琵琶"。 失敗作置き場からこっそりパチってきたこの魔道具の音色にもだえるがいいニャ!」
そう告げるなり、マルはそのおかしな形をした琵琶の弦を適当に指で爪弾く。
「うげぇ……なんて……ひどい」
その場にいた妖精達から嫌悪にも似た呻きが漏れる。
吐き出されたのは、『こいつは楽器など触ったことも無いド素人だ』と誰もが理解するほどのひどい音色。
ついでに琵琶の元々の音色も調律が狂いまくりで最悪――形だけを真似て素人が適当に作ったことが丸わかりである。
だが、この琵琶の本領はその音色ではなかった。
素人の奏でるテルミンのように不気味な音色に反応し、虚空から次々に水の詰まった大量のシャボン玉が生まれ、風にのって戦士と勇者に押し寄せる。
だからなんだといいたいような光景だが、その場にいた幾人はその意味を悟り、その瞬間にサーっ血の気の引く音を感じつつ頭を抱えた。
「全員伏せろ! 爆発するぞ!!」
その警告に、敵である戦士の男も即座に行動を開始した。
「くっ、カリーナ! とっとと迎撃しろ!!」
少女に攻撃の命令を出し、さらに万が一に備えて勇者である少女をその腕の中に抱きとめる。
「……うん」
再び吐き出される真紅の羽吹雪。
そして泡と羽、その二つが触れるや否や、
ドオォォォォォォォォン!!
その場に立っていることすら難しいほどの振動と、鎧を着込んだ猪人ですら宙に投げ出されるほどの爆発が周囲を襲った。
「ぐはっ……痛ってぇ……な……なんて攻撃しやがるっ!! おい、カリーナ、怪我なんざしてねぇだろうな!?」
「……うん。 大丈夫。 それより、早く薬飲んだほうがいいよ」
地面に転がった戦士の男は、自らの腕の中の勇者に怪我がない事に安堵すると、顔を顰めつつ起き上がった。
さすがに本人は無傷ではないのであろう。
呼吸で鎧が微かに上下するたび、痛みを堪えるような呻き声が漏れる。
「お、俺
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