Episode 3 デリバリー始めました
猛火と愚者の殺意ある交接
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しかし長い銀の睫に包まれている目は、本人の白痴か人形のように薄弱な意志しか持ち合わせて無機質なイメージにも関わらず、まるで燠火のような不気味な光を放って煌々と輝いている……あたかも人々を惑わす"鬼火"のようだ。
そしてその吐息が大気を揺らすたび、真紅の光と炎の鳥が生み出されていた。
魔術でも理力でもない、あえて言うならば何らかの上位存在による"加護"とでも言うべき力。
――そう、彼女こそが先ほどの火の鳥の群れの生みの親。
そして、"勇者"の称号を持つ炎の使い手だった。
まるで寝室から強引に連れ出されたかのような薄絹に身を包み、その首に奴隷のような首輪を巻いたその場違いな姿は、戦場においてこの上も無く異彩を放つ。
だが、彼女には身を守る鎧も、敵を切り裂く刃も必要なかった。
その肌に許可無く触れるものはことごとく灰燼に帰し、その前に立ちふさがるものは火の鳥の洗礼を受けて消し炭になる。
必要なのは、彼女が何をすべきかを導く道標。
……彼女のその首につながれた鎖は"支配の経絡"といい、奴隷の体と能力を自らの手足の延長上として扱うための魔道具だった。
彼女は鎖から流れ込む男の思念に身をゆだね、彼女はただ促されるままに破壊の力を撒き散らす。
だが、それは強制されてのことではない。
時折男の顔を見るたびに彼女の顔によぎる悦楽の表情が、彼女がこの戦士に向けるゆがんだ愛情を物語る。
勇者と呼ぶよりは、魔女。 あるいは堕落した御子とでも呼んだほうが、むしろしっくりとくるだろうか。
そして彼女は、戦士の『回収しろ』の言葉の意味を把握すると、手ににもった掌大の黒水晶の球をそっと天にかざした。
「聞け、死せる者よ。 我は汝を呪い、死の神たるタナトスと眠りの神たるヒュプノスの手より汝を切り離し、永久に現世へと留め置く。 我、死せる汝に命ず。 汝、冥府の川を渡ること無かれ。 夜の女王の祝福の下、我の悪意が汝等を捉え、忠実なる僕となさんことを」
か細い、だが確かな力を帯びた声が虚空を揺らす。
「我掲げるは夜の女神ニュクスの掌なり」
すると、周囲を漂っていた不可視の力場……死せるゴブリン兵の魂たちがふらふらと吸い寄せられるかのように黒水晶の中に吸い込まれていった。
勇者や冒険者達は、魔物を倒した後にその亡骸の一部をドロップアイテムと称して持ち去ることで生計を立てているが、この地にて彼等が狩り集める物……それはゴブリン達の魂。
そもそも人界で畜産物を荒らすゴブリンの退治するならともかく、わざわざ魔界に来てまでゴブリンを狩る理由――それは、彼等ゴブリンの魂が、錬金術師や人形使いた
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