第九十二話 これは急がなきゃな
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さかそんなことを……」
ニアも普段の陽気さは微塵(みじん)も見せず、真剣な表情を見せている。
声を発した二人だけではなく、その場にいた誰もが、あまりにも衝撃的事実に愕然としていた。
闘悟は黙ってリールを見つめる。
彼女の瞳は、涙を止めることを忘れたように流れ続けている。
ミラニが闘悟の近くへやって来て小声で言う。
「……これはまさか?」
「そう……だろうな」
その二人のやり取りは誰も気づかなかった。
意味深なセリフだけに、誰にも聞かれなくて良かったと闘悟は思った。
もし聞かれたら、その内容について聞かれただろう。
しかし、ここで長々と説明している時間もないのだ。
すぐに行動を起こさなければ、最悪のシナリオを作ってしまう。
ミラニは闘悟の肯定の言葉を聞くと早速行動を起こそうとする。
「すぐに騎士団を動かして探しましょう」
ミラニがそう意思表明(ひょうめい)をすると、彼女は誰の返事も聞かずに部屋を出て行こうとする。
「待てよミラニ」
彼女の腕を掴んで止めたのは闘悟だ。
「何だ?」
「聞いてなかったのか? 誰かに話したことがバレれば、ヨッチに危険が及ぶって」
「そんなヘマなどしない」
「幾らお前の部下が優秀だからといって、気づかれる可能性もあるぞ。それに、捕らえている奴らは『黄金の鴉』の奴らだろ? 騎士団が負けるとは思わねえけど、時間がかかっちまうんじゃねえのか?」
「そ、それは……」
確かに闘悟の言う通りだった。
自分が育てている騎士団は優秀だ。
統率も取れているし、実力もある。
有名なギルドパーティ相手でも遅れはとらないだろう。
だが、何人いるかも分からないし、交戦になってしまった場合、時間を掛け過ぎてしまえば、そのはずみでヨッチに危険が及ぶ可能性が高い。
「で、ではどうすると?」
ミラニ含め、皆が闘悟に視線を向ける。
闘悟は、ミラニの腕を解放すると、不安そうに顔を歪めているリールを見つめる。
そして目を閉じ、朝見たカイバの悲痛な表情を思い出す。
闘悟はゆっくりと瞼(まぶた)を上げ口を開く。
「……オレがやる」
カイバは気絶した振りをして仰向けになっている。
横目で三人を見つめる。
(俺……何をしてんだ……)
将来はグレイハーツ魔法騎士団に入って一花咲かせようと思って、今まで頑張って来た。
まだまだ実力も経験も足りないが、これからも必死になってやっていこうと思っていた。
悪い奴を取り締まり、人に害を成す魔物を討伐する。
父親を早くに亡くしているカイバは、強くなって家族を守ろうと思ってきた。
だけど
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