第九十一話 汚ねえ奴らだな
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ないようにお願いしますよ?」
だから下手に動くなということだ。
「くっ……」
体を必死に動かそうとするが、思い通りにならない。
痛みはもう無いが、その代わりに全身が麻痺したように動かせない。
「ああ、それと仕事をしっかりしてくれれば必ず妹さんは無事に返しますよ? その証拠として……」
ガシューが指をパチンと鳴らす。
すると男達が道を開けるように広がる。
カイバは目を大きく見開く。
そこにいたのは口を塞がれ涙を流している自分の母親であるリールだった。
「か……あ……さ……」
リールは体を抑えられながら、口元のタオルを取られる。
「カイバァァァァッ!!!」
息子の安否(あんぴ)が気になり必死に声を上げる。
「お母様はお返しします。無事にね。妹さんは仕事が終わった後にお返しします」
解放されたリールは急いでカイバのもとへ駆けつける。
彼の上半身を抱え、頬に触れる。
「これを彼に」
リールに一つの袋を渡す。
「それを飲めばすぐに解毒できます。彼には働いてもらわなければならないので、ちゃんと飲ませて下さいね」
ガシューが手を上げると他の者達はその場を離れる。
「ヨッチッ!!!」
リールがぐったりしているリールに向けて声を発するが、その声は届かない。
「大丈夫です。我々の望みが叶えば、彼女は無事にお返しします。まあ、無事かどうかは……彼次第ですがね」
恐怖の色を顔に宿してリールは震える。
「それでは……あ、誰にもこのことを言ってはいけませんよ?」
ガシューはその場から去って行く。
その後は、ガシューに渡された薬を服用した。
少し不安だったが、彼の企みを考えれば、これが偽物ではないと判断して飲んだ。
言う通り、体の痺れが嘘のように消えた。
リールはすぐさま騎士団に報告しようと考えたが、カイバがそれを拒否した。
恐らく誰かに話せばヨッチの命が危ない。
二人で考えに考え、辿り着いた答えは、ガシューの望み通りにするということだった。
それが一番安全で、確かな方法だったからだ。
何も死人が出るわけではない。
ただ少しだけ不正を行うだけだ。
それだけで愛しい妹が戻って来る。
カイバは自分の出した答えを突き進むことを決心した。
妹は絶対に無事に取り戻すと心に決めた。
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