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トーゴの異世界無双
第九十一話 汚ねえ奴らだな
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「やあ、カイバくん」


 その男には見覚えがあった。
 ギルド登録者にとって、知らない者がほとんどいないほどの有名人だ。


「……ガシューさん?」
「ほぅ、私のことを知っているのですか?」
「『黄金の鴉』のナンバーワンのことを知らないなら、それはモグリですよ」


 ガシューは、灰色の長い髪の毛を、額を中心に分けて両側に流している。
 少し小さめの丸眼鏡を掛けている。
 まるで学者のような雰囲気だが、その魔法は強大だと聞いている。
 よく見れば、周りにいる人物の服には『黄金の鴉』の紋様が刻まれている。
 間違いなく全員が『黄金の鴉』に所属している。


「それで? あなたほどの人が、俺に何か用なんっすか?」


 カイバは未だ警戒しながら質問をする。
 とてもではないが、友好的な雰囲気ではなさそうだ。


「いやなに、少し君に頼みたいことがありましてね」


 眼鏡をクイッと開けて答える。


「頼み……ですか?」


 頼みと聞いてさらに警戒を強める。
 こんな大勢を引き連れて頼みも無いだろうと感じる。


「ええ、実は今日君が対戦するのはこのグレイクなんですがね」


 ガシューの隣にいたグレイクが一歩前に出る。


「対戦相手? まだ分からないんじゃ……」


 対戦相手は当日発表されるので、普通は知らない情報のはずだ。


「そんなこと、調べればすぐに分かりますよ。私達の情報網を甘く見ないでほしいですね」


 不敵そうに笑みを浮かべる。


「まあ、そんなことはどうでもいいでしょう。私達の頼みというのは、君のパートナーについてなんです」
「パートナー? もしかしてヤーヴァスさんですか?」
「そうです」
「ヤーヴァスさんがどうかしたんですか?」
「簡単なことです。今日の試合の中、奴を退(しりぞ)けたいのです」
「……退けたい? 勝ちたいってことですか?」
「そうです。このグレイクを勝たせたいのです」


 カイバは段々と状況を理解し始めた。
 ヤーヴァスは生半可な実力者ではない。
 それこそ、優勝しても不思議ではないほどの強さを秘めている。
 だが不運なことに予選内容はタッグマッチ。
 しかもそのパートナーが明らかに実力で見劣りするカイバだ。
 ヤーヴァスの足を引っ張って試合に負けろと提案しているのだ。


「どうしてそこまで勝ちたいんっすか?」


 すると、キラリと目を光らせてガシューが答える。


「欲しいものがありましてね」
「欲しいもの? 賞金っすか?」
「おや? もしかして君は知らないのですか?」
「え?」


 カイバは相手が何を言ってるのか分からなかった。
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