Episode2 迷宮少女
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》をほとんど上げていない俺では、薄暗い中その子の顔を見ることは出来ない。だが、何故か俺はこの子を知っているような強烈な直感に襲われた。
(誰だ……?)
しかしその答えにたどり着く間もなく、俺とほんの数秒視線を交わしたその少女は弾かれたように走り去った。……T字路の左に。
突然のことに暫し立ち尽くす。考えうるかぎり、俺にあんなちっちゃい知り合いはいないはずだ。こちらの世界でも、あちらの世界でも。では、昼間出会ったキリトのようにどこかで見掛けたことがあるのだろうか。だとしたら、いつだ?そもそも、こんな最前線の迷宮区にあんな少女が……。
―――迷宮少女
さっき知ったばかりの言葉が、突如俺の思考の中に沸き上がった。
そうだ、シスイからのメールにあったじゃないか。『迷宮区でクエスト絡みらしき少女が見られる』と。それがあの少女なら、千載一遇のチャンスだ。少女の走り去った先は行き止まり。
このソワソワと落ち着かない感覚も、レアクエストの前に感情が高ぶっていると考えれば納得が行く。
俺はすぐに駆け出した。
少女の後を追って駆け足に行けば、そこはやはり行き止まりの小部屋だった。部屋の奥には既に誰かの開けた宝箱が鎮座している。見回すまでもない部屋の大きさ。しかし、妙だ。こんな小さな部屋なのに――少女が見当たらない。
俺が立っている以外の部屋の三方は全くの壁。ここまで来る通路も一本道で、曲がり道もなければ壁に隠れられそうな窪みもなかった。頭がひどく混乱する。
ゲーム的に少女は姿を見せただけなのだろうか。俺はあまりゲーム経験が多い方ではない。が、いくつか手を出したスタンドアローンのRPGでは敵キャラ若しくは、のちのキーキャラクターが顔見せ程度に現れ忽然と姿を消すことはしばしばあった。今回もその類いなら諦めるしかない。シスイのメールにも『フラグがあるかも』とあった。
少女の発見は諦めよう。今もモヤモヤと気持ちの悪い胸の感覚を無理矢理棚上げし、部屋の入口付近の壁に体を預けた。どうせならここでシスイに返信してしまおう。今の出来事も、彼女の書く新聞のネタになるかもしれない。
だが、ホロキーボードに手は置くものの文章は全く進まない。心底文才がないなぁと思う。簡単な文で返して、次あったときに直接口で話そう。俺の考えはそんなところで纏まった。迷宮区ならではの沈黙の中指を走らせる。
その時だ。静けさに否応なく研ぎ澄まされた聴覚が不思議な音を拾ったのは。小さく、本当に小さくスンスンと鼻を啜るような音がした。少しでも身動きすれば消えてしまいそうなその音に体を強張らせた。懸命に音の出所を探る。
……部屋の右奥の方からだ。立ち上がりそちらに向かう。もう音は消えていた。それでも向かう。
隠し部屋でもあるのでは?と勘繰
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