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 Fate/Last 第6次聖杯戦争
8年後のある日
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握らなかった日は思い出の中にはほとんどない。だが、この衛宮邸での日々はそれを忘れさせるようなものだ。幸福、という言葉がぴったりなのだ。ただただ、カムランの丘での傷による死という断罪を待っていたアルトリアにはそんな幸福は過ぎていた。自分はこのままでいいのだろうか、今すぐにでもこの身を切り裂き、サーヴァントとしての身を消滅させ、カムランの丘に戻りたいという衝動に駆られる。しかし、その時に浮かぶのはいつも士郎の傷だらけの手と、笑顔だった。自分が傷だらけというのに他人のことをそれでも助けようとする、不器用な正義の形。ただ、どうしようもなくそれがアルトリアは好きだった。どうすればいいのだろうか、自責の念と、いまさら自分に現れた人並みの幸せ。どちらをとればいいのだろうか。
 ランスロットはこんな私を見てどう思うだろう。

 そうして思いを巡らせながら、バイクを異常なスピードで走らせ、通常なら三十分のところを十分で埠頭の先端にまでやってきた。
ここ冬木市は山と海に囲まれており、自然がうまく調和しあい地脈にゆがみを発生させている。それが魔術師には大きなことなのだが、アルトリアにはあまりわからなかった。とにかく、埠頭にある灯台に冬木の地の防衛線の一角を占める遠坂家の支点を守ることが、この街の要なのだ。
 「問題は無いか・・・」
 確認を終えたところで、ここ最近アルトリアの「足」になっているハーレイに乗る。スカートではなく、ジーンズを穿いているので、ハーレイにまたがるのも楽だ。正直な話、馬よりもはるかにこちらの方が乗りやすいと思ってしまっている自分がひどく情けない。
 もう一つの支点までは、ここから十分ほどバイクを走らせた先にある。
 道すがら信号待ちをしていると、アルちゃん、と話しかけられた。見ると、それは竹刀を片手に持った藤村大河だった。
 
 「どうしたのです、タイガ。まだ、三時を回ったくらいではありませんか、まさか職務放棄ですか?」
 バイクを降りて聞いてみると大河は少し気まずそうな顔をして。
 「いや〜、ちょっとね。学校の子のひとりが行方不明になっちゃって、警察で話を聞いてきたのよ」
 「なんと・・・」
 大河は士郎たちも卒業した高校で教師をやっている。それを知らない人が大河の性格のことを聞くと、この世の終わりのような顔をして、日本の教育について心配するのだ。本人はそのことには気づいていないのが救いというべきか、なんというべきかセイバーにはよくわからない。
 とはいえなんだかんだで、みんな慕っている、と士郎は言っていた。
 「タイガ、私も手伝いたいのですが」
 「う〜ん、お願いしたいんだけど。学校の問題だしね。危ないし、アルちゃんには頼れないわ」
 たまにこうして教師らしいことを言うので油断はできない。
 「わかりました。何かあっ
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