8年後のある日
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に帰りましょう。セイバーに連絡して頂戴」
「・・・」
凛の右腕には紅蓮のようにきらめく三角の令呪が浮かんでいたのだ。
「嘘・・・だろ?」
「今はあれこれ考えてるべきじゃないわ。急いで飛行機のチケットを手配して帰りましょう」
「ああ・・・でも」
「でも?」
少しだけ士郎の顔がゆるむ。まるで、家族との再会を喜ぶかのような。
「桜にアル、元気かな」
その言葉に凛は一瞬だけ呆れた風な顔をしながらも、微笑み、そうね、と小さく聞こえないくらいの声で言った。しかし、すぐに険しい表情に変わって。
「行くわよ、士郎。あれが協会連中とかの手に渡ったんじゃ目も当てられないことになるわ」
「ああ」
その日電話が鳴ったのは、昼下がりだった。
アルトリアは子供たちに武道を教えるバイトが休みなので、お茶を飲みながら本を読んでいた。
けたたましくなるその音は今では姿を消しつつある黒電話のものだった。機械類に弱い凛がぎりぎり使えるらしいアンティークだ。
急いで受話器を取る。つい二、三年前までは、受話器を取るのさえうまくできなかったのだが、ようやく慣れてきた。
「はい。衛宮ですが」
『おお、アルか』
ずいぶんと久しぶりな声が受話器からした。こうして、機械から声がするというのも最初はおかしな気がしたが、それも慣れてきてしまった。慣れとは恐ろしいとアルトリアはつくづく思った。
それに士朗が自分のことをアルと呼ぶようになったのも今では慣れてしまった。
「シロウですか。どうしたのです?そちらの仕事はもう済んだのでしょうか」
『ああ。もう空港まで来てるんだ。どうだ?何か変わったことはあるか?』
どこか、士郎の声におかしなものがあるとセイバーは思った。こういうところは鈍ってはいない。
「いいえ。そんなことはないのですが・・・どうかしたのですか?」
『いや、そっちについてから言う。結界の状態を見ておいてくれ・・・ああ!もう十円玉がないのか!?ア、アル、悪いが切るぞ』
「わかりました。待っています。サクラに言えば、ごちそうを用意してくれるでしょう」
『ああ。じゃあな』
どこか引っかかるものはあったが、それは気にせずにセイバーは結界を見てこようと思った。自分は士朗のサーヴァントなのだ、命じられれば死んでさえ見せる。
「サクラ、士朗たちはどうやら今日にでも戻ってくるようです。食事は多めに用意しておいてください」
居間にいた桜を発見してセイバーは言った。桜は十年前とあまり変わってはいなかった。それがいいことなのか悪いことなのか自分には判断がつかないが、サーヴァントである身の自分は少なくとも老いは訪れることは無い。
「まぁ、そうですか。じゃあ何か作っておきます。それにしても遠坂先輩も少しは
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