四話
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「戦声」に相当するものとして辺りに伝わる。
だがそんなものは副次的な効果でしかなかった。
獣の頭上の空に大きな穴が開く。夜ではない黒が、そこにある。
奥行きのない、平坦な、絵の具で画用紙を塗りつぶしたような黒がそこに広がっていた。その黒を縁取るように七色の光が垂れ下がっている。
獣を包む炎がますます高く燃え盛り、その量と勢いを増していく。
それだけではなく大地にも新たな影が出現していた。
手には思い思いの形をしたノコギリ状の刃の錬金鋼を持ち身に纏うのは黒を基色に白いラインが入ったローブ、そして顔には嘗ていたとされる獣、狼を模った仮面をつけている。
『狼面衆』と呼ばれ都市の裏側、そして世界の裏側で暗躍する者達。イグナシスの下この世界を破壊しようと企む者達だった。
既にイグナシスは存在しないがもはや普通の存在に戻れる訳も無く、オーロラフィールドに漂う魂の欠片と成り果てようとしていたところにヴェルゼンハイムの意志に引き摺られて再びこの世界で実体化したのである。また、若干ながらもこの世界で活動していたものも集まってきている。
この世界の破壊を望むという点では一致しているものの狼面衆もヴェルゼンハイムにとっては敵である。
この世界以前からあるフェイスマンシステムを下地にしているとはいえ狼面衆もこの世界によって生まれたものであり、結局のところ破壊対象であることを理解してはいるがこの世界を終わらせる事は狼面衆単独の力ではもはや不可能であり危険だとわかっていても引き返すことができない状況にあった。
「こんな時にまで出てくるなんて暇な方達ですね。あ、でも今回は表に出てきてる訳ですからいつもとは少し違いますね」
「だがこれほどの数を出してくるのは見たことが無いぞ。それに倒しきることは出来るのか」
「そうなんですよね、倒したっていう手応えが無いですし幾らでも沸いて来ますからね」
それを見ても緊張感の無い声を出すクララ。武芸者としては平均的な力量しか持たない狼面衆は個々であれば普通の武芸者にも倒せるレベルであり、集団であってもクララは脅威を覚えない。
所詮狼面衆程度の力ではどれほど集まろうともクララの敵ではないからだ。ただ数がいると多少面倒だと思う程度のことである。
「一気に蹴散らして行くしかあるまい」
「ま、そういうことになりますよね。それじゃ、行きますか」
二人とも剄を練る。突っ込むとは言ってもクララの剄技は中距離戦向けが多いのだが。
ニーナが放とうとしている剄技は決まっている。
ディックから教わりその後数多の場面で使用してきた技。
(まさか先輩に対してまた使う羽目になるとはな)
グレンダンでもぶつかり合いを経験した、それぞれの意志を通すため退けない戦いだった。
だが今回はそれ以上、ただ勝って己の意志
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