第八十九話 みんなに心配かけちまった
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で通じているか理解しているのだろう。
まさかここまで勝ち残れるとは思っていなかったに違いない。
だから不安で仕方無かったのだ。
ヤーヴァスはそんなふうに解釈した。
「だがもう試合は始まる。方式はロイヤルだ。単純に二対二でのバトルだ」
カイバが呆然としている間に、ヤーヴァスと相手選手とでバトル方式を決めた。
「わっかりました!」
カイバは大きく頷いた。
やはり何か空元気(からげんき)のように感じるが、もう気にしている時間は無い。
「彼らはここまで勝ち残って来た猛者(もさ)だ。気を緩めるな少年」
「はいっす!」
二人のやりとりが終わると、ちょうどいいタイミングでモアが開始の合図をした。
四人に緊張が走る。
互いに対戦相手を観察するように睨み付ける。
カイバとヤーヴァスの相手をする二人は、どちらもギルドに所属する者で、かなりの実力者だ。
一人は『黄金の鴉(からす)』に属し、名をグレイクといい、もう一人はフリーのギルド登録者で名をコークという。
「少年、私の後ろへつき、サポートを願えるか?」
ヤーヴァスは自分の後ろに控えているカイバに、背中越しに声を掛けた。
「えと……」
少し戸惑いを見せたカイバは、さりげなく相手側に視線を向ける。
まるで何かを確認するような仕草をする。
そして、軽く目を伏せ頷く。
「わ、分かりましたっす」
ヤーヴァスが何故カイバをサポートにしたのか幾つかわけがある。
その一つは、カイバの実力を見抜いたからだ。
相手はとてもではないが、カイバが前衛を務められる相手ではない。
むしろ足手纏いになる確率が高すぎる。
だから彼には自分の後ろで大人しくしておいてもらう方が闘い易かった。
もう一つは、仮に彼が、それなりに闘える能力があるとしても、彼の雰囲気が気になった。
覇気が感じられないのだ。
今から闘うというのに、どこか心が別の場所にある。
そんな感じがするのだ。
そんな者が積極的に闘いに参加したところで結果は見えている。
これは相手を死傷させるのは禁止されてはいるが、互いに勝つために真剣に闘う。
そんな相手と対峙し、集中しなければ、命を落とす可能性だってあり得る。
だからこそ、今のカイバには前衛は荷が重すぎる。
「私が合図するまで防御に徹してもらいたい」
ヤーヴァスは瞬時にカイバの様子を見抜き不動(ふどう)を命じたのだ。
カイバが頷くと、ヤーヴァスは目の前の相手に集中し始める。
相手も前衛と後衛に分かれている。
グレイクが後衛で、コークに指示を出しているみたいだ。
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