第八十九話 みんなに心配かけちまった
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でもよく分からねえんだ。でも、何かアイツの顔が気になってな……」
「顔? ……ふむ、確かに顔色は良くないようだ。だがそれだけでそんなに気になるものか?」
「だから分からねえんだよ。ただあの顔が気になって……」
まるで何かに追い込まれているような、逃げ道が無くて絶望しているような、そんな顔つきが気になった。
だがそんなふうに感じるのは闘悟だけだ。
それは、闘悟自身が経験のある顔つきだったからだ。
誰にも助けを求められない、誰も信じられないといった感じの表情。
その経験は闘悟にとっても苦い思い出になってはいるが、まさか身近な仲間がそんな表情をするとは思っていなかった。
しかも普段のカイバとは比べるべくもない負を現す顔である。
だからどうしても気になったのだ。
それにそれ以外でも気になることがある。
カイバが自分に何かを言いかけて止めた時、明らかに彼の様子が急に変化した。
だが今ここで考えてもハッキリとした答えが出ないのも確かだ。
そこでふと観客の方に目を向けた。
今日は応援に来てねえのか……?
それは昨日見たカイバの母親と妹のことだった。
あれだけカイバの二次予選出場を喜んでいたというのに、この場にいないのは違和感を感じる。
もしかしてそのことが何か関係しているのかもしれない。
「でも、良かったのです」
不意にクィルが声を上げる。
闘悟はそんなクィルに顔を向ける。
「もしかしたら、どこか体調が優れないのではと心配していたのです」
「悪かったなクィル」
「はいです。ですが、カイバさんはどうなされたのでしょうか?」
「……とりあえずこの試合が始まればハッキリする……そんな感じがする」
闘悟の言葉に皆が互いの近くにいる者と顔を合わせる。
そして再び舞台の方へ注目する。
ヤーヴァスは不思議に感じていた。
昨日に顔を合わせた時は、とても愉快で陽気な少年だった。
だがどうしたことか、昨日の人物とはまるで雰囲気が違う。
別人ではないかと疑ってしまうほどの変わり様だ。
「もうすぐ試合が始まる。少年よ、準備はいいか?」
未だに沈黙を座している少年であるカイバに声を掛ける。
すると、突然カイバは笑顔を作り言葉を放つ。
「あはは! もっちろんっすよ!」
「だが、顔色が優れないが?」
「いや〜実は昨日試合のことを考えて眠れなかったんっすよ!」
それで表情が優れなかったのかと、ヤーヴァスは納得した。
それにしてはあまりにも悲壮(ひそう)感が強そうに感じたが、余程緊張しているのかもしれない。
彼はまだ若く発展途上だ。
昨日の対戦も見たが、自分の実力がどこま
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