第八十八話 カイバはどうしたんだ……?
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らす。
「おいカイバ」
するとようやく気がついたようにハッとなる。
「う、あ、ト、トーゴ……?」
「どうした? 顔色が悪いぞ?」
そうなのだ。
カイバの表情が優れない。
真っ青になっているのだ。
「い、いや、何でも無いっての……はは」
その笑顔は妙な作り笑いのように感じた。
頬が引き攣(つ)り、瞳に力が宿ってなかった。
「でも……」
「ホントに何でもないって!」
「……何かあったのか?」
「え?」
「言えよ、大会前にそんな顔されたら気になって仕方ねえ」
するとカイバは顔を伏せて、何かを考える仕草をする。
「じ……実は……」
そうして、ゆっくり顔を上げたカイバは、何かを目にしたようにハッとなる。
「い、いや、やっぱ何でもないわ!」
「は?」
「気にすんなって!」
闘悟がおかしな様子を続けるカイバを追求しようとした時、モアの声がそれを遮(さえぎ)る。
「さあ! それでは第一回戦を始めたいと思いますので、H番とN番の方々は準備をして下さい!」
その声でカイバは闘悟から離れる。
「おいカイバ!」
「トーゴ!」
カイバは闘悟に背を向けて言葉を放つ。
それを受けて闘悟は足を止める。
「……今は……何も聞かないでくれ」
「カイバ……?」
「お互い……頑張ろうな」
そう言って振り向いた彼の顔は、陽気(ようき)な彼からは考えもつかないくらい悲しみで歪んでいた。
何かの痛みを必死で我慢しているような、見ていると切なくなるような顔つきだった。
闘悟は去って行くカイバを無言で見つめる。
「カイバ……」
一体どうしたのだろうか?
だけど、あの顔はただ事ではないと感じる。
そういえば、先程カイバは何かに気づいたような仕草をした後、また様子がおかしくなった。
それを思い出し、カイバが見たであろう視線を追ってみる。
そこには他の参加者達がいた。
すると、闘悟と目が合った者がいた。
その人物は、闘悟と目が合い、フッと見下したように笑った気がした。
「アイツは……」
相手は目を逸らしたが、闘悟にはその者のローブに刻まれた紋様を見る。
「『黄金の鴉(からす)』…………まさか……?」
闘悟は嫌な予感を感じる。
カイバが見ていたのは奴だったのかと思案するものの答えは出ない。
だがもう、試合が始まる。
闘悟は胸にしこりを抱えたままその場を後にした。
控室に行きカイバを探してみたが見当たらなかった。
闘悟は仕方無いと思い、今度会ったら事情を聞くことにしてV
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