第百二十四話 評判その四
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それだけの力を集中させれば無理強いも出来る、だがだというのだ。
「しかしそれを使わず」
「朝廷、帝のお許しを得たうえで動いた」
「切ったものを周りにも見せた」
「帝にも献上している」
「それがですな」
「はい、そこが全く違います」
これまで拝領した足利幕府の将軍達とそこが違うというのだ。
「織田信長、高く昇っています」
「して殿、それでなのですが」
「その織田家とはどうされますか」
「これからのことですが」
「一体」
「ことを構える理由はありません」
謙信は己の座から硬質の高い美女のそれを思わせる声で答えた、黒の上杉の衣の中に白い顔立ちが映えている。
その謙信がこう言うのだ。
「尾張の蛟龍は朝廷への忠誠を見せ民への仁愛があります」
「だからですな」
「我等にしてみれば」
「甲斐の虎は奸臣です」
北条氏康もそうなる、謙信にしてみれば幕府の意向に従わない彼等はそうした立場の者達になってしいまうのだ。
だから謙信は信玄をこう言うのだ。
「あの者、その過ちを正し公の為に働かせます」
「相模の獅子もですな」
「北条氏康もまた」
「無論です。あれだけの資質を持ちながら公の為に動くことはしない」
謙信は謙信の考えから言っていく。
「それを正す必要があります」
「しかし織田信長にはないですか」
「尾張の蛟龍には」
「あの者は朝廷を常に見ています」
このことは謙信も見極めている。
「第一の公を忘れてはなりません」
「第一ですか、朝廷は」
「そして帝は」
「無論です、また民を忘れない」
信長の政はまずそれがある、その為彼は民からは非常に慕われているのだ。
「それもよいことです」
「しかしです」
ここでまた言う兼続だった。
「我等は武家です、武家ならばです」
「ではやはり」
「はい、公方様を立てられるかどうか」
今言うのはこのことだった。
「それが問題です」
「そうですか、そのことが」
「その通りです、公方様を立てなければなりません」
謙信にとってはこのことも絶対だった、武家だからこそ足利家を立てなければならないというのである。そのことを言うのだ。
「若しそれを破るならば」
「その時はですか」
「織田信長を」
「正します」
信玄や氏康に対するのと同じくだというのだ。
「そうします」
「わかりました、それでは」
「その時は」
二十五将も応える、彼等にとって謙信は絶対である。このことは信玄と二十四将の間と同じであると言っていい。
それで謙信に言うのだ。
「織田信長と戦います」
「そうします」
「その時はお願いします」
謙信も彼等に確かな声で返す。
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