第百二十四話 評判その一
[8]前話 [2]次話
第百二十四話 評判
信長は東大寺より拝領した蘭奢待を岐阜城の中で家臣達に見せそのうえで足軽達に守らせたうえで民達にも見せた、皆それを見て唸る様に言った。
「これがあの蘭奢待」
「いや、はじめて見たが」
「噂のものを見られるとはのう」
「こうしたことになるとは」
朝廷の宝だ、切れ端とはいえそれを見て唸ったのだった。
「我等の殿は違うのう」
「平清盛入道や源頼朝公ですら出来なかったことを為された」
「殿はあのお二人以上ぞ」
「やはりかなりの御仁じゃな」
「それは間違いないな」
「絶対にのう」
「天下人に相応しいわ」
蘭奢待一つ取ってもだというのだ。
「桶狭間に美濃のこと」
「上洛に四国にこれじゃ」
「今度右大臣にもなられるそうじゃ」
「後は天下人として確かになられる」
「うむ、それだけじゃ」
「天下統一じゃ」
それになるというのだ、彼等は岐阜城の前の台に置かれたその小さな切れ端を見ながら言うのだった。
このことは当然他の家にも伝わった。信玄は甲斐でその話を聞き家臣達にこう言った。
「わしの思っていた以上じゃ」
「織田信長の器はですか」
「うむ」
その通りだと信繁に答える。
「まさにな」
「左様でありますか」
「大器、しかもじゃ」
さらにだというのだ。
「頭も切れる、それもかなりな」
「当初思われていたよりも」
「かなり上じゃ。あれはわしも考えつかなかった」
拝領はというのだ。
「とてもな」
「しかし織田信長はですか」
「やりおった、そしてそれをじゃ」
さらに言う信玄だった。
「これ以上はないまでに上手くやってみせた」
「ただ拝領したのではありませんでしたな」
真田が言ってきた。
「帝に献上し家臣や民達にも見せた」
「うむ、己で見ただけではなかった」
信長は性格的にも一人占めはしない、だがここでは政のことも考えてそのうえでそうしたのである。信玄はそのことを言うのだ。
「あれで朝廷の信頼をさらに高めた」
「帝への」
「家臣達は忠誠の度を高め民も尚更慕う様になった」
「まさに一石にして、ですな」
真田はさらに言う。
「四鳥はありますな」
「織田家の威信を高めただけではなくな」
朝廷、家臣、民の三つだった。
「これだけのことはわしでも出来ぬ」
「いえ、御館様ならばです」
「それだけのことは充分為されます」
二十四将達にとって信玄は絶対の存在だ、その信玄ならというのだ。
「織田信長が如何に凄かろうとも」
「それ位のことは為されます」
「それも充分に」
「いや、わしもそこまでは考えられなかったわ」
信玄はまた言う。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ