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シャンヴリルの黒猫
52話「第一次本戦 (3)」
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全額受け取る場合も、ちゃっかり“手数料”と銘打って倍額請求することもあるとか無いとか。ただ、全額請求が一般的ではある。

 閑話休題。

 つまりクラインからすれば、勝たねばFランカーに負けた初戦敗退者(予選はカウントしない)のレッテルを張られるばかりか武器まで片方無くし、その上賞金も賠償請求すらできないという正に泣きっ面に蜂、七転八倒の処遇を受ける他無いのだ。今頑張らずしていつ頑張るというのか。
 気合い十分に剣を掲げると、その場で詠唱を始めた。

「…」

『あれは身体強化系の補助魔法! クライン選手、実は魔法も使えたということですか!?』

『といっても、彼は根っからの剣士ですから、多分1発で魔力総量的には限界でしょうね。持って10分といったところでしょうか。まあ、身体強化魔法程度なら覚えている剣士も少なくありませんし、特に驚くことではないですよ』

 そうはさせじとクラインに迫るアシュレイだが、寸前で首に殺気を感じ横に跳んだ。数瞬前に首があった場所に恐るべき勢いで槍が通過する。もし当たっていたら並みの人間なら首を骨折、下手をすれば頭が潰れるだろう。アシュレイであっても浅くない傷を負うのは間違いない。それは大会のルールに反する。リーメイは敵選手であるアシュレイが避けると確信していたのだ。

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