第一幕その三
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第一幕その三
「ジークリンデ」
「はい」
そのうえで妻に声をかけるのだった。だがここで彼は気付いた。
「むっ!?」
まず妻の顔を見る。そのうえで若者の顔を見る。見比べてそのうえで言うのだった。
「似ているな」
こう言うのであった。
「その目の光まで。空似だと思うが」
「あの、それで」
ジークリンデがここで夫に対して問うてきた。
「何をすれば」
「食事の用意をしてくれ」
こう妻に告げるのだった。
「わしとこの客人のものをな」
「わかりました。それでは」
ジークリンデは竈に向かった。その間にフンディングは若者をその広間にあるテーブルに座らせた。そのうえで彼も座り二人向かい合って話すのだった。
「それで客人よ」
「はい」
「君は随分と遠い道を歩いてきたのだな」
「おわかりなのですか」
「その服を見ればわかる」
そのぼろぼろになった軍服とコート、それにブーツを見ての言葉だ。
「馬にも乗らずここに来た。これまでに何があったのだ?」
「森や野を越えて山や谷を越え」
「道中は平穏ではなかったのだな」
「そうです。自分で来たその道すら覚えていません」
こう語るのだった。
「ここが何処さえもわかりません」
「君を守り隠すこの屋敷はこのフンディングのものだ」
彼は若者に告げた。
「君がここから西に行けば豊かな屋敷を持つ一族が居を構えていて私の名誉を守っている」
「貴方の一族がですか」
「そうだ。そしてだ」
若者に対してさらに問うのであった。
「よければだが」
「はい」
「君の名前を聞きたい」
彼の名をというのである。
「それは私の名誉になる。私を信じることができなければ妻に言えばいい」
「あの」
ここでそのジークリンデが二人の食事を持ってやって来た。それはソーセージにザワークラフト、それとジャガイモに黒パン、それとビールであった。
「私も宜しければ」
「わかりました」
若者はそのジークリンデの言葉を受けて頷いた。
「私はです」
「貴方は」
「フリートムントと名乗ることは許されません」
「平和を守る者か」
フンディングはフリートムントという言葉の意味を呟いた。
「フローヴァルトと名乗りたいと思っています」
「喜びを守る者か」
また言葉の意味を呟くフンディングだった。
「しかしヴェーヴァルトと名乗らねばなりません」
「悲痛を守る者」
今度はジークリンデが呟いた。
「私の父はヴォルフェといいまして双子として生まれました」
「双子か」
「御父上の御名前はヴォルフェ」
二人はまたそれを聞いて述べた。
「妹がいましたがその妹と母は私が幼い時に別れあまり覚えてはいません」
「何て悲しいこと」
ジークリンデはそれを聞いて呟く
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