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或る皇国将校の回想録
第二部まつりごとの季節
第三十九話 近衛衆兵鉄虎第五〇一大隊編成に関する諸事情について
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に形になっているのは大したものですが」
藤森が言うとおり、近衛衆兵鉄虎第五○一大隊は近衛衆兵初の剣虎兵部隊であり、陸軍から融通された将兵達が中心となっている。
 定数1500名の内、将校を100名と通常よりも高い将校の比率(通常は2000名程度の連隊で100名前後の将校が配置される)は高い問題解決能力を齎し、それに従って急激に部隊の練度を高めている。だがそれも頭数が揃わなくては話にならない。

「――気に食わないな」
 騎兵さえあれば簡単な話だったのだが。と新城が内心思うと
「騎兵があれば良いのですがね。少なくとも剣虎兵よりは当てがつきやすいのですが」
と藤森も(常識通り)同じ考えに行き着いた。
 足の速い捜索騎兵ならば導術をつければ奇襲を受ける確率も減るし万が一対処不能な敵と遭遇しても離脱する事は不可能ではない。
 ――問題は近衛衆兵の独立戦闘能力を引き下げる為に騎兵の保有を禁じられている事だ。
そして、肝心の騎兵を抑えている近衛禁士隊とはまともに共同訓練すらも行なっていない。近衛総軍として動いても満足に連携が出来るか大いに疑問が残る。

「騎兵は禁士隊が独占している。我々に回される馬は荷馬と輓馬だけだ」
 これは、近衛衆兵の反乱を抑える為の措置だったが、結局、それは杞憂に過ぎなかった。
近衛衆兵は今では弱兵の代名詞である。
 北領でも馬堂豊久中佐が利用したのは衆民出身の工兵たちが持つ高い能力――基本的には職工に携わる者が志願するからである――と旅団長が持つ親王の肩書きだけで戦力としては欠片もあてにしていなかった。新城とて当時の旧友の判断を妥当なものと捉えており、陸軍の古兵を基幹にしてようやく精強さを得られる可能性に漕ぎ着けたと考えている事から、その弱兵意識は根強いものである事が知れる。

「尖兵を中核にした搜索中隊とでも言えば誤魔化せますし、駒州の人間に口利きできませんかね?」と藤森は新城に尋ねるが新城はその倍も素っ気なく返事をした。
「無理だ、そもそも僕は駒城の大半には嫌われているからな」

数少ない頼れる人間である馬堂家の者達とてこの面倒極まりない問題を頼んでも突き返すだろうと新城は見きっていた。豊守は既にあらゆる方面に対して便宜を図っているし、非常に多忙な身だ。豊久は第十一大隊の引き抜きの時点で相当な制限を新城にかけていたことから、彼も駒城の重臣団の一員であり、反感を買うような真似を避けようとしている事が分かる。如何に豊久が身内に甘いとしても今度頼んだとしても婉曲に断られることは新城も理解している。
――今、頼れるとしたら大賀大佐と衆兵隊司令閣下だ。だが大賀大佐はあくまでも戦務参謀であって兵站参謀でも人務部員でもない、実仁少将――親王殿下の御威光とて限りがある。
「いざとなったら銃・砲兵の割合を増やして使
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