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或る皇国将校の回想録
第二部まつりごとの季節
第三十九話 近衛衆兵鉄虎第五〇一大隊編成に関する諸事情について
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皇紀五百六十八年 六月四日 午前第十刻 泡岡駐屯地内本部官舎 大隊長室
近衛衆兵鉄虎第五〇一大隊 大隊長 新城直衛少佐


ようやく座りなれた大隊長室の椅子に体を預け、新城はうんざりと首席幕僚の報告に耳を傾ける。
 ――面倒事にだけは不自由したことがないな。まぁ、軍務であり、且つ必要であるならば避ける事は出来ないのだが。
「今の所はまあ概ね貴方の構想通りですな。今日は二人で良いでしょう。
最初の三日で目立った奴は大抵追い出しましたし、最初は危なっかしかった若い少尉連中の中では訓練で随分とマシになっているのもいます」
 藤森首席幕僚が博労の様な目つきを帳面に落しながら報告する。
 新城が着任して即座に打ち出した将校の大規模な入れ替えという政策は新編大隊に予想以上の活性化を促している。既に初期配置された将校の内、半数以上は着任時と面子が変わっている。今までの人務の入れ替えを見ると実仁親王と大賀大佐――そして馬堂中佐が推薦した将校達はしっかりと残っている。
「訓練幕僚もよくやっております。この調子なら想定よりも早く形になるかもしれませんな。
幸いながら訓練用の物資は随分と気前よく充てられておりますからな」
 更に、猫や訓練用実包などの物資に関しては馬堂豊守准将の働きかけによって近衛衆兵隊への流入も増大しており、当然ながら実仁少将はそれを優先的に五○一大隊に充てている。
「他人との縁に感謝するというのも久しぶりだな」
輜重将校達や後方勤務の将校達に対する馬堂豊守の影響力は無視できないものである。
 特に剣牙虎の飼育数に余裕があるのに近衛へ回すことを渋る担当者を一喝した上に視察に出た飼育場のあまりに杜撰な管理体制に激怒した彼の要請によって大臣官房監察官室から直々に特別監察が行われたことはちょっとした武勇伝になっている。

 ――少なくともこうした軍政的な仕事に関して頼れる人間が居るのは助かる。もっとも、頼りすぎるとろくな事にならないだろうが。

「問題は捜索剣虎兵中隊の増設ですね。随分と陸軍の方でも融通を利かせてくれましたが流石にこれ以上の剣虎兵は回せないと通達が来ております」
 自分の能力ではどうにもならないとこの男は拗ねた態度をとる。普段の口調もけして愛想のよいものではなく、能力は確かであるがこの男と個人的な付き合いを歓迎する者は少ないだろう。
「新編予定の二個鉄虎大隊の為に準備されていた人員の一部を第十一大隊の再建に回しておりますし、他も有望な連中は第十一大隊に優先的に回されています。幾ら何でも近衛、それも衆兵を優先させるつもりは更々ないのでしょうな」
 ――さすがに馬堂准将も近衛にばかりかまけてはいられないか。

「基幹人員だけの訓練は順調ですがね。頭数が揃わなくては話になりません。
えぇ、それでもここまで急速
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