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東方小噺
毒人形と楽園の素敵な巫女
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「うん、蛇。蝮とか」

 柄杓の中身飲みながら萃香は樽の中を指差す。

「蛇酒の味がする。どことなく漢方のような苦味のあるお酒だ。蛇の毒が酒で溶けるとこういう味がする」

 霊夢とメディスンは理解する。メディスンが入れた毒は蛇の毒だったのだ。マムシやハブなど蛇で作られる酒は多い。そういった蛇の毒はアルコールと結合して無害化され滋養強壮作用を持った成分へと変わる。薬用酒として用いられることもある立派なお酒だ。

 不思議そうながら特に不満な顔を浮かべていない萃香を見て霊夢は確信する。これはいけると。蛇が入り込んだ、そういってもいいが嘘を嫌う鬼だ。ここは正直に言ったほうが言い。
 そこまで考え霊夢は視線をメディスンへ。メディスンも自体を理解し萃香の前へと前進。そして土下座。

「すみません、私のせいです」
「うん?」

 訳がわかっていない萃香にメディスンは事情を説明する。自分が毒を入れてしまったことを。萃香はひたすらに酒を飲みながらそれをふんふんと聞き続ける。

「あー、つまりこれはお前のせいなのか」
「すみませんでした」
「確かに腹立たしいところはあるけど、そこまで正直に謝れるとなぁ」

 萃香は困ったように視線を霊夢へ飛ばす。萃香としては自分の酒に勝手に手を出されて腹立たしいのは事実だ。自分と何の関わりもない毒人形一人踏みにじるのはたやすい。
 ここで萃香にとって問題となってくるのが霊夢だ。メディスンとかいう毒人形は霊夢の知り合いらしい。霊夢を好ましく思っている萃香としては無慈悲に踏みにじって霊夢からの印象が変わるのも怖い。
 引きどころを考えるなら、正直に謝ってきた人形を一つ見逃すくらい鬼の器量だと自分を納得させる。

「まあ、別にいいよ。これはこれで美味い酒だ。次はないけどな」
「ありがとうございます!」

 命を繋げられてメディスンは安堵する。そんなメディスンを見て、萃香はふと思いつく。

「お前、毒を操れるんだよな? どのくらいの毒まで行ける」
「一応、私が知っている毒なら一通りはいけます」
「そうかそうか。なら人形、今回のことの罰として私の酒造りに協力しろ。毒というのは考えによっては薬にもなる物だ。薬だけでなく様々なものもな。酒作りの材料代はりに使ってやる」
「分かりました」

 最後に一掬い飲み、萃香は蓋を占めて樽から降りる。

「あの酒は暫くあのままにしておいてくれ。毒が溶けきって全体に味が回るまで置く必要がある。頼んだぞ霊夢」
「はいはい了解。ただ、出来上がったら私にも少し飲ませてよ」
「好きなだけ飲むといいさ。霊夢ならいいよ」

 そう言って優しく、楽しげに笑って霊夢の方を叩き、萃香の姿は宙に消えた。霞となって去ったのだ。
 静かになった部屋の中、すること
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