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東方小噺
毒人形と楽園の素敵な巫女
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 いくつか案が挙がるがどれも難しかったり鬼畜だったり。思わずメディスンの方が霊夢を止める事に。
 結局答えがでないまま時間が流れていく。取り敢えず外に撒いてみたが特に結果は出ない。そうしている内に外は夕焼け色になっていく。

「いっそ紫にでも飲ませれば……大妖怪だし、問題ないでしょ」

 投げやり気味に霊夢が言う。もはやメディスンは何も言えず黙る。止めなければきっとその妖怪が飲むことになるのだろう。元々のメディスンの目的でもある自分の毒のテスト。それが果たされるというのにメディスンの心は複雑だった。

(私、なんの為に来たんだっけ……)

 思わず黄昏る人形、メディスン。危ない思考を垂れ流す霊夢を見て何かもう色々とどうでも良くなっているのだ。寧ろ毒を流すのを止める側に回っている。

(そう言えば、博麗の巫女は妖怪に好かれるって言うわね。みんなこんな気持ちなのかしら)

 絶対に違う。が、今はそんなことどうでもいい。
 自分のことを振り返っているメディスンを無視して霊夢は袖から符を出す。印を切り霊力を込め、符を挟んだ指を振り下ろし空を切る。否、空間を切り裂く。
 亜空穴。霊夢が扱う空間転移技術。縦一文字に切り裂かれた空間の裂け目が暗い穴として霊夢の前に現れる。その穴に向かって一歩進むよりも早く、声が響く。

「おーい、何やってるんだ霊夢」

 霊夢のみならずメディスンの思考も止まる。突如空間から霞のごとく現れた少女、その頭にある二本の角を見て。

「すい、か……」

 霊夢よりもなお小さい背丈。頭の横から生えた二本の少し歪な角。健康的な腕と脇を晒したノースリーブの服。変な趣味と思われそうな体につながれた鎖と鉄球。腰元につけた、小さな瓢箪を持った少女。
 鬼の四天王。伊吹萃香が不思議そうな瞳で霊夢を見ていた。

「どこか行くのか?」
「あ、あーと、その……何でもないわ。ちょっと技の練習してただけ」
「へー熱心だな。霊夢は不真面目って言葉を体現した存在みたいに思ってたけど」
「失礼な。必要ならちゃんと修行するわよ」
「ほんとか? まあいいや」

 にひひと笑って萃香は部屋の中に入り、ひょいと大樽の上に登る。

「あ、ちょ……」
「味見味見。どんな味かな〜」

 止めるまもなくどこからか出した柄杓で中の酒を掬い、萃香は酒を飲む。

「ん……?」

 そして不思議そうに首を傾げる。その様子を見て霊夢とメディスンは終わったと確信する。
 霊夢の視線はメディスンへ。こうなったからには事情を説明しメディスンを萃香に売り渡すしかあるまい。それを理解しメディスンの瞳に恐怖が宿る。

「ねえ萃香、実は――」
「なあ霊夢、蛇でも入ったのかこれ?」
「――メディスンが……蛇?」

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