毒人形と楽園の素敵な巫女
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飲む予定あったのよねぇ。どうしよう」
「取り敢えず怪しいの全部捨てるのは……」
「量が量でしょう。しかもその大樽は萃香が造って淹れた酒よ。鏡開きも楽しみにしてたのに」
「萃香って、鬼の伊吹萃香のことよね?」
「それ以外にいるの? 鏡開自体は蓋を別に用意して適当に誤魔化せばいいとして、毒はねぇ」
絶望的な状況にメディスンは膝を落とす。実物は知らないが鬼の噂は知っている。それに睨まれるなど考えたくもない。ガクブルものである。
霊夢とて心境は穏やかではない。預かっていた酒に毒を入れられたのだ。楽しみにしていた連中に愚痴を言われるだろう未来は決まっている。つまり、二人して頭を悩ませる状態になってしまった。取り敢えず大樽には代わりの蓋を置いて考え始める。少なくとも、飲んでどの程度の害があるかは分からないと話にならない。
「ちょっとあんた、飲んでみなさいよ。自分の毒でしょ」
「無理よ。人形だし、そもそも私に生き物に効く毒は意味がない。それに飲んだところで毒の種類なんてわからないわ」
「使えないわね。そこらの野良妖怪でも捕まえて飲ませてみようかしら。お燐は……今日は来てないわね」
使えない、と呟く霊夢にメディスンは戦く。容易く実験台にしようとするその鬼畜さにこいつ寧ろ妖怪じゃね? とまで思う。
「庭の草木にでも撒いてみようかしら」
「植物じゃすぐには分からないと思うわよ」
「じゃあ河童がいる河」
「あなたほんとに巫女なの? というか人間?」
「失礼ね。どっからどうみても人間でしょう全く」
霊夢は頬を膨らませぷんすか怒る。そんな霊夢をメディスンは冷めた目で見る。寧ろ同類を見る目でもある。
「うちにある守谷の分社にお供えしましょうかしら。それともうちの神様へのお神酒にでも……清められて毒消えないかしらね」
「神様が可哀想だからやめてあげて。そういう神徳ないと思うわっよ」
「いっそ現代神の早苗にでもあげましょうか。一周回って常識を大切にし始めるわよきっと」
「少なくともあなたが常識を語ってはいけないと思うわ」
無言で霊夢に蹴られる。メディスンはゴロゴロ転がって壁にぶつかって止まる。
「何するのよ」
「うるさいわね。……火を入れて消えればいいけど、消えないのも多い。そもそも樽から出すならすぐに飲むか瓶にでも詰めないと……。山から狼天狗でも引張てこようかしら。匂いを嗅がせてどうにか」
「変質してるでしょうし難しいと思わよ。それに来てくれないと思うし」
「なら永遠亭かしら。死なないんだから首根っこ捕まえて飲ませればいいわ。医者もいるし、鈴仙なら貸してくれそうね」
それは鈴仙『が』なのか鈴仙『を』なのか。知らぬ永遠亭の医者のことを思い、メディスンはそれ以上聞くのが怖かった。
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