暁 〜小説投稿サイト〜
東方小噺
毒人形と楽園の素敵な巫女
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 郷の東部にそれはあった。
 年式を感じる古びた木造ながら人の手による清潔さを残す建築物。広さに見合わぬ人気なさの境内にあるのは本殿と分社、宝物殿という名のガラクタが込められた倉庫。
 郷の均衡を保つ博麗の巫女が住む昼の博麗神社。巫女の私室もある本殿の一室。そこに身を隠すようにしながら動く小さな影があった。
 里の幼子よりもさらに小さく、膝丈よりも少し大きい程度。大きなリボン、洒落た服、御伽噺の如き赤いトゥーシューズに生気を宿さぬ肌。滲む毒の香。
 命を得た人形、メディスン・メランコリーは足音を隠しながら神社の台所へと向かっていた。
 
「何かないからしら……」

 抜き足差し足忍び足。シューズに合うバレリーナの如きつま先立ちで不格好に動きながらメディスンは台所の周辺を探し回る。

「ああもう、メンドくさい。疲れた」

 思ったよりつま先立ちが疲れたので普通の歩き方に戻し、捜索を続ける。台所のすぐそばの戸を開け、その部屋の中にあるものにメディスンの鼻と眉が動く。

「お酒……かしらね」

 鼻腔から頭に抜けるような芳醇で清涼感を持ったアルコールの匂い。部屋の中には蓋のされた大きな酒樽を始めとし、様々なお酒の瓶や樽や瓢箪が置かれていた。度々ある宴会の残りや、次の宴会用の酒の置き場なのだろう。鬼連中や一部のもはやアル中だろうとばかりの連中を思うに残りの可能性は少ないが。
 部屋の中に入り、何かいいものはないかとメディスンは見渡す。やはり目に付くのは大樽だ。メディスンの背丈では半分にすら満たないその樽の上へとメディスンは近くに落っこちていた木槌を片手に飛ぶ。

「うん、これでいいわね」

 呟き、木槌を両手で持って大きく身を捻る。

「振り子打法!!」

 メディスンの渾身の力を受け蓋がカパッと割れる。酒の匂いが一層増し、メディスンは眉をしかめる。人形であるメディスンの体は一度匂いがつくと取れづらいからだ。
 要件を済ませるべくメディスンは樽の縁に座り、手を酒の中に突っ込む。

「うふふ……これでいいわね」

 用件が終わってテンションが上がるメディスン。調子に乗って他の樽などにも片っ端から手を突っ込んでいく。

「ふふふふ、これで私の――」
「私の家で何をしているのかしら」

 背後から聞こえてきた声にメディスンの体がぴたっと止まる。止まるどころか一瞬で目から光を消し座り込みんでうつむき「私人形だよ! ここには誰もいないよ!」とばかりに取り繕う。それだけ怖かったのである。その声の主が。
 声の主――素敵な巫女さん博麗霊夢は再度言う。

「で、私が掃除をしていた間に何をしていたのかしら。答えないなら更に聞くわ。何の為に忍び込んだの。理由を次の中から選びなさい。私は優しいから罰も選ばせてあげ
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