第四十三話 病院にてその八
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「君ともな」
「じゃあ僕は」
「君が降りるならいいさ」
戦いからだ。そうすればだというのだ。
「俺は何も言わないさ」
「何もですか」
「ああ、何もな」
中田の包容力さえ感じられる微笑はそのままだった。飄々としていながらもそこには芯の強ささえ存在していた。
「むしろ有り難いよ」
「剣士が一人減ることが」
「戦わないで相手が減ることはいいことだよ」
「だからですか」
「是非降りて欲しい位だよ」
中田の本音だった。偽らざる。
「そうしてくれたらいいんだがな」
「そうですか。ですが」
「だよな。君には君の考えがあるよな」
「けれど。僕が若し」
「おいおい、深刻な話じゃないぜ」
中田を止めれば彼の家族は助からない、上城はそう考えだしたが中田はその彼に先立ってこう言ったのである。
「それはな」
「深刻じゃない?」
「君は戦いを止めたいんだよな」
「はい」
悩みもしたが決めたことだ。戦いを止める為に戦うことは。
「それはもう」
「だよな。悪い考えじゃないさ」
中田は笑みでこう上城に告げた。
「むしろいい考えだな」
「いいですか」
「こうした戦いで得られるものってな。エゴの塊の奴とかが出て来たら厄介なんだよ」
「エゴ、ですか」
「世の中には碌でもない奴がいるからな」
中田はここでは顔を顰めさせた。彼が知っているあまり人間性のよくない連中のことを思い出してのことである。
「だからな」
「それでなんですか」
「ネットで荒らしてる様な奴いるだろ」
「ええ、そういう人間はどうしても」
「いるよな。そうした奴がいるからな」
それでだというのだ。
「ああいう手の下種が若しもな」
「剣士の戦いに勝ったら」
「碌でもないことになるだろ」
「はい、確かに」
「ああいう奴ってのはいいことは何もしないんだよ」
ネットの世界で暴れ他人に迷惑をかけることだけを人生にしている輩が願うことなぞいい筈がないというのだ。
「だからな」
「そうした人が生き残る場合も」
「まあそんな奴が。引きこもってネットで暴れてるだけの奴がな」
剣士として生き残れるかという話にもなった。
「怪物とか俺達と戦ってもな」
「すぐに敗れますか」
「俺達は命賭けて戦ってるだろ」
「はい」
「連中は自分の命なんか絶対に賭けないさ」
だからこそネットで暴れているだけだというのだ。
「まあ。剣士になってもな」
「すぐに怖気付いて逃げるかですね」
「最初の戦いで死ぬかだな」
そうして消えるだけだというのだ。ネットで暴れているだけの連中は。
「それで終わりだな」
「そうなりますよね」
「ただ下種はネットだけじゃない」
「実際にもいるんですね」
「そういう奴が。俺達の後での戦いで勝ち残ったらな
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