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久遠の神話
第四十三話 病院にてその七

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「それで植物人間なんだよ」
「だからなんですか」
「金にこだわってるのもな」
「ご家族の入院費用だったんですか」
「そっちは何とかなるな」
 彼にとっては幸いなことの一つだった。
「かなり稼いできたからな」
「あの黄金が」
「十年はいけるってな」
 二人も聞いて知っていることだがあえてここでも話してみせた。
「いいことだよ。三人がそれまで生きられるんならな」
「十年ですか」
「ああ、けれど回復はな」
 何とか前を見た。いつもの態度は守った。必死に痩せ我慢をしてそうしながらだった。中田は二人にこう言った。
「無理だろうな」
「そうなんですか」
「絶望的だってな」
 必死の痩せ我慢を続けながらの言葉だ。
「怪我があまりにも酷くてな」
「それで中田さんは」
「俺が戦う理由がわかっただろ」
「はい」
 上城も答える。頷いて。
「ご家族を助ける為に」
「相当やばい家でもない限り誰でも家族は大事さ」
「はい、僕もそう思います」
「親父もお袋も妹もな」
 この三人だった。中田の家族は。
「俺が最後の一人まで生き残って願えばな」
「回復するんですね」
「ああ、それしかないからな」
「だから中田さんは」
「戦ってるんだよ」
 言葉は現在形だった。
「何とかな」
「そうだったんですか。中田さんは」
「言ったよな。俺は何だってするって」
「はい、前に」
「そういうことなんだよ。俺は家族の為にな」
「戦われるんですか」
「俺が戦って家族が助かるんなら喜んでそうするさ」
 中田は今も笑みを浮かべている。しかしだった。
 その顔に確かなものを宿らせて痩せ我慢も続けながら上城と樹里に話した。
「地獄にだって落ちているさ」
「決められてるんですね」
「決意っていうのかね」
 それは何かもだ。中田はわかっていた。
「覚悟はしているさ」
「だからこそ」
「君とも闘ったんだよ」 
 かつての闘いのことも話す。その彼を見据えながら。
「怨みとかはないけれどな。むしろな」
「むしろ?」
「俺は君のことは嫌いじゃないんだよ」
 上城の顔を見て微笑んでみせての言葉だった。
「むしろ好きだよ。真面目で一本気だからな」
「僕の中田さんの性格は」
「好いてくれてるんだな」
「そうです」
 お互いに嫌いではなかった。このことは間違いなかった。
「けれどそれでも」
「悪く思うなって言葉は図々しいさ」 
 中田の倫理観ではそうなることだった。
「それでもな」
「ご家族の為にも」
「俺は戦うんだよ」
 この決意は変わらなかった。
「絶対にな」
「そうですか」
「ああ、戦う」
 また言う中田だった。
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