第弐話 《三人目》
[3/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
できるのは幻想だけしかない。だけどそれを形にすれば、他の誰かが思い描くものとは違う結果が待っている。それだけだ」
一息に言い切ると、シンも並び空を仰ぐ。
「どうして、人間ってのはこうも違うんだろうな」
ぽつりと悲しげに呟いて、目を閉じた。
それから少し経って、シンが問いかけてきた。
「シキ、お前は後悔しているか?」
「何を」
「俺と遭ったことを、だ」
シキはしばし沈黙した後、はぁ〜と大きな溜息を吐いて、何とも言い難い表情で、
「馬鹿じゃねえのか?」
と言う。
「お前と会ってなければ、今の俺は居ないんだ。お前は、俺にとって救世主だったんだ。だから、このゲームに巻き込まれたことがお前のせいだ、なんて言うつもりは微塵も無いし、この世界で死んでもお前を恨むことは決してしない」
言い終えて、シキは呆然とした表情のシンを置いて森を奥へと進んでいく。
「あ、お、おい!」
はっと我に返り、シンも急いでシキの背中を追った。
○●◎
「……おいシキ、何か物音が聞こえないか?」
突然シンが立ち止まり、耳を澄ませるよう促す。
シンに言われるまま耳に意識を集中させると、何か獣のような声が聞こえた。
「……本当だ」
声の聞こえた方向は、丁度シキ達の進行方向だった。
シンと顔を見合わせる。
「……行くか?」
「行った方がいいだろう。誰かが戦っているかもしれない」
「だよな……。先行ってる」
言うにや早く、相方の返事を待たずに駆け出す。
敏捷力一点特化のステータスを持つシキは、シンを置き去りにして疾駆する。
程なくして、二体のモンスターとそれに両手剣を向ける少女を見つける。
モンスターは裸体の女人型だったが、両の腕は肩口からワシの大翼、足の先は鳥の鉤爪になっており、とても美しいとは言えない。むしろ、シキの美的センスから言わせてもらえるなら、
「醜い」
その一言に尽きる。
疾駆していたその身体の勢いを殺さぬままダガーを抜き放ち、バネ仕掛けの玩具のように身体を弾けさせる。
地を蹴り空を舞ったシキは、放たれた矢のように異形へと向かっていく。
「――――ッ!?」
異形の首がシキに向いたが、既に遅い。
シキは異形に走る五本の線、その内の腋から胸へと一直線に走る線に目をつけ、一閃した。
しかし、シキの視界は驚くべきものを捉えた。
「何だと……!?」
異形がシキの刃を翼で受け、必殺の一閃を躱したのだった。
果たしてシキの一撃は異形、《アウリス》の翼に押し留められ、HPバーを僅かに削っただけだった。
「チッ……!」
シキの舌打ちと同時に迫り来る鉤爪、彼はそれを難なくいなすと数歩距離を取った。
「大丈夫!?」
両手剣で二体目の《アウリス》の蹴りを受け、少女が声を掛けてくる。
首肯して無事を示し、《アウ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ