第五十九話
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に身じろぎも出来ないくらい消耗していた俺のことなど目もくれていなかった彼に槍を構えて突撃し、その身を刺し、貫いた。
虚を突かれなければ、避けることは出来たかもしれない彼は苦しそうに血を吐いた。
「アルヴィス卿! あなたは魔将などでは無い。 "ヒト"として逝け!」
「……礼を………言う」
「……ぐぁっ!」
俺の腿を巨大な何か凄まじい痛みが襲い、苦悶の声が思わず上がった。
……騎竜と己を繋ぐ紐やベルトを断ち切った奴は、なんなく着地するとあの恐るべき神槍を投げつけ、力を使い尽くした俺の脚を貫いたのだ。
「……ヴェルトマー公を討ったか。 まぁ、いい。 公を討った者を俺が仕留めたならばグランベルより褒美もあるだろうからな。 ………こういう時、『恨みは無いが死んでもらおう!』などと言う物だが、貴様には恨みしか無いから気楽なものだ」
「……負けて、たまるか!」
「ふん。 その醜態でよく言う。 そして、さらばだ!」
奴が投擲した輝きを避けようとしても驚くほど体が動かず、俺を刺し貫いた………
そう、思ったが………
「若者よ、生きてくれ………」
「アルヴィス卿!」
「ぬぅ……公よ、つまらぬことをしたな」
まだ息のあった彼は俺の前に回り込みその身を挺すと……カッと目を見開いたまま、その数奇な人生に幕を降ろした。
かと言って、なんら状況が好転した訳では無い。
……アレさえ封じれば、そして、アレを奪い取ることこそがあの契約の条件。
避ける事が出来ないのなら、そう……
【大楯】よ! 出ろ! そう思いながら激痛に耐えながら身を捩る。
……そう都合のいい話は無い訳で、胸や腹のど真ん中こそ外れたが脇腹を大きく抉った傷口からは止めどなく血が溢れる。
再度放たれた輝きに大楯を願い、そして避けようと必死にもがく。
奇跡的に外れた神槍は、すぐに奴の手に戻った。
表情に愉悦を加えた奴は口元を歪め
「それそれ、 攻め手の一つも無くてはつまらんぞ」
「……生憎、遊びでっ、殺し合い、している余裕はっ、無い!」
「よかろう。 ならば本気で殺す!」
「……お前が殺すと言って、それが、出来たのを、見たことは無い!」
「死ね!」
放たれた輝きが俺の目の前で青紫色の障壁に阻まれ、互いに力が干渉し合い、神槍が宙空に浮かび、不自然な情景を作り続けている。
【大楯】に阻まれているその瞬間、俺は神槍に両手を伸ばすと思い切り掴み、握りしめた。
「なっ! 小僧! 貴様、【大楯】だと!」
「……そうだ!
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